南極海の海水と雪から広範囲にマイクロプラスチックを検出。難分解性の有機フッ素化合物も。人類の廃棄行動の蓄積明瞭に。グリーンピース調査で判明(RIEF)
2018-06-08 17:59:12
環境NGOグリーンピースは、南極海で海水と雪のサンプルを採取し調査分析した結果、その双方の大部分からマイクロプラスチックと難分解性化学物質を検出した、と発表した。北極の海氷にマイクロプラスチックが蓄積している調査結果は出ているが、南極海で、マイクロプラスチックが広範囲に確認されたデータはこれまであまり例がない。人間を原因者とするマイクロプラスチック汚染が、両極圏に広範囲に及んでいることを示した。
今回のサンプルは、グリーンピースの南極調査隊が、2018年1月から3月の3カ月間にわたり調査活動を実施、直接、採取した。グリーンピースは、南極海保護区設立キャンペーンの一環として、ほとんど知られていない南極海底の生態系を調査する「ランドマーク潜水艦ダイブ」等の科学的調査も実施している。
報告によると、南極海の水面で採取した海水サンプル8つのうち7つから、マイクロファイバー(極細繊維)等のマイクロプラスチックが検出された(1㍑のサンプルから検体1つ以上)。さらに、マンタトロール(微小浮遊物回収ネット)を用いてマイクロプラスチック検出用に9つのサンプルを採取したところ、うち2つからマイクロプラスチックの断片が見つかった。
雪原からの雪のサンプルでは9つのうち7つから、難分解性化学物質である有機フッ素化合物の一種(PFAS)が検出された。これらの化学物質は、多くの工業製品や消費者向け製品において広く使われており、野生生物の生殖や発育の問題へのつながりが指摘されている。サンプルには降雪して間もないものも含まれ、大気から有害化学物質が堆積したことを示唆しているという。
一方、北極圏でのマイクロプラスチック汚染については、ドイツのアルフレッドワグナー極地海洋研究所(AWI)は、2014年春から2015年夏にかけて、砕氷観測船ポーラーシュテルン(Porastern)を使って、3度にわたって北極海での調査航海を行った。北極圏の海氷中にマイクロプラスチックが高い濃度で含有されていることを発見した。最高濃度は1㍑当たり1万2000個のプラスチックが検出されている。http://rief-jp.org/ct12/78884
グリーンピース南極保護キャンペーン担当のフリーダ・ベングツォン氏は、「南極は遠く離れたところにある手つかずの大自然だと私たちは思いがち。だが、海洋汚染や気候変動の影響、産業用オキアミ漁に至る資源枯渇問題など、人間による活動が南極海の環境に負荷を与えていることは明白。今回の調査結果は、最も隔絶された南極の生息環境ですら、マイクロプラスチックと難分解性化学物質に汚染されている事実を示している」と指摘している。
そのうえで、これらの問題を解決するためには、「汚染の元を断つことから始めなければならない。さらに生存を脅かされているペンギン、クジラ、その他の生態系のために、南極海保護区を設立する必要がある」としている。
グリーンピースは、南極海に180万k㎡の広さの海洋保護区の制定を求めている。実現すると、ドイツの国土面積の5倍と、地球最大の保護区になる。保護区の設置はEUによって提案されており、今年10月に開催される南極海洋生物資源保存委員会(CCAMLR)において決議される見込み。
http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/press/2018/pr20180607/
https://www.greenpeace.org/international/publication/16899/microplastics-in-the-antarctic/