HOME |大気汚染が糖尿病の原因に、世界で年間320万人発症。WHOの環境基準以下でもリスク増大。米ワシントン大学等の研究(CNN)  |

大気汚染が糖尿病の原因に、世界で年間320万人発症。WHOの環境基準以下でもリスク増大。米ワシントン大学等の研究(CNN) 

2018-07-02 21:44:45

air1キャプチャ

 

  (CNN 大気汚染はたとえ米環境保護庁(EPA)や世界保健機関(WHO)の基準を下回っていたとしても、世界で糖尿病のリスクを増大させているという研究結果を、このほど米ワシントン大学などの研究チームが発表した。

 

 この研究結果は6月29日のランセット・プラネタリー・ヘルスに発表された。研究チームは、2016年だけでも世界で320万人が大気汚染に起因する糖尿病を発症したと推定。これは全症例の14%を占めている。米国では年間15万人の糖尿病発症が、大気汚染に関係しているとした。

 

 論文執筆に加わったワシントン大学の研究者は、「糖尿病と、現在の安全基準を大幅に下回るレベルの粒子大気汚染との間には、否定できない関係がある」と指摘。「多くの業界ロビー団体は、現在の基準が厳しすぎるとして緩和を求めている。だが証拠が示す通り、現在の安全基準はまだ不十分であり、強化する必要がある」と話す。

 

 粒子状物質が引き起こす大気汚染について、EPAの基準では最小で直径2.5マイクロメートル程度の粒子を規制対象としている。

 

 10マイクロメートルより小さい粒子は肺に侵入できるだけでなく、血中にも入り込んでさまざまな臓器に運ばれ、慢性炎症反応を引き起こして疾病の原因になるとみられている。

 air2キャプチャ

 

 WHOによると、2014年までに糖尿病と診断された成人は世界で4億2200万人に上る。これと比較して、1980年の時点では1億800万人にとどまっていた。

 

 糖尿病は主に肥満や運動不足や遺伝リスクが原因で発症する。しかしこれまでの研究では、糖尿病と大気汚染の関係も指摘されていた。大気汚染が炎症反応を引き起こし、インスリンの分泌をコントロールする膵臓(すいぞう)の能力を低下させると考えられている。

 

 今回の研究では、糖尿病の病歴がない米退役軍人170万人について、中間値で8年半の継続調査を行い、糖尿病の発症率と、大気汚染の程度を比較した。

 

 その結果、1立方メートル当たり5~10マイクログラムの大気汚染物質にさらされた退役軍人のうち、およそ21%が糖尿病を発症していたことが判明。このレベルの大気汚染は、EPAが定める1立方メートル当たり12マイクログラムの安全基準を大きく下回る。

 

 大気汚染物質が11.9~13.6マイクログラムに増えると、リスクはさらに増大して糖尿病の発症率は約24%になった。この3ポイントの増加はそれほど大きな差には見えないかもしれないが、人数に換算すると、年間で10万人のうち5000~6000人が追加で糖尿病を発症している計算になる。

 

 研究チームは各国で行われた研究などをもとに、大気汚染の程度に照らし合わせて糖尿病のリスクを診断するモデルを作成した。

 

 国別にみると、インドやアフガニスタン、パプアニューギニアなど、大気汚染対策が進んでいない国では、大気汚染に起因する糖尿病のリスクも高いことが判明。一方、フランスやフィンランドといった富裕国はリスクが低い傾向にあった。米国のリスクは中程度だった。

https://www.cnn.co.jp/fringe/35121786.html