HOME9.中国&アジア |日本でも、中国によるプラスチック廃棄物の輸入規制の影響で、滞留増加。輸出業者の中には倒産も。中国依存の処理システムに課題(各紙) |

日本でも、中国によるプラスチック廃棄物の輸入規制の影響で、滞留増加。輸出業者の中には倒産も。中国依存の処理システムに課題(各紙)

2018-07-19 12:54:40

plustic0fef5bd530b4644c8bffd725d46e33fc

 

  各紙の報道によると、中国が今年初めから廃プラスチックの輸入を停止し、欧米などの先進国でプラスチック廃棄物の滞留問題が発生しているが、日本でも同様の事態になっていることがわかった。廃プラを中国に輸出していた業者の中には破綻に追い込まれところもあるほか、これまで有料で中国に売却していた企業も、焼却処理に回さざるを得なくなっている。これまで中国が日本から受け入れていた廃プラスチックをすべて再生利用する能力は日本になく、埋め立てや焼却に回すしかないという。

 

 日本経済新聞が報じた。経営破たんに追い込まれたのは、福岡県嘉麻市の栄盛。今年3月、福岡地方裁判所で破産手続きを始めた。同社は日本で集めた廃プラスチックを中心として中国に輸出していたが、今年1月から中国が廃プラの輸入停止を実行したことから、行き詰まった。日本から中国への肺プラ輸出量は香港経由分を含め年間約130万トンで、日本の廃プラ輸出の8割を超す。

 

 茨城県笠間市の亜星商事もこれまで日本から廃プラを中国に輸出し、それをペレットに加工して地元企業に販売していた。だが、原料となる廃プラの輸出ができなくなったため、中国・上海に設立していたペレットの加工工場は年内に閉鎖する。代わりに、日本でペレット製造工場を設立して、ペレットにしたものを中国に輸出する方針に切り替えた。笠間市の工場の月産製造能力を数億円を投じて高めるほか、千葉県に新たに、廃プラの粉砕処理工場を新設する。

 

 大手企業のキャノンはこれまで、廃プラを有価物として中国企業に売却していた。それができなくなった。このため発生する廃プラについては、日本国内での焼却処理に回した後、現在は「(プラスチックなどに再利用する)日本の再生業者を探し、全量を引き取ってもらっている」(担当者)という。他の企業もビジネスに伴って発生する廃プラ処理先の転換に追われている。東京商工リサーチの原田三寛情報部長は「国内の輸出業者の倒産や廃業が相次ぐだろう」と話している。

 

 発端となった中国の廃プラ輸入規制は、習近平政権が2017年7月に、世界貿易機関(WTO)に対してプラスチックや紙などの輸入を一部停止すると伝え、今年1月に入って実際に停止した。これまで中国は16年時点で、世界が輸出する廃プラの半分強に相当する約730万㌧を輸入していたが、それが止まったため、各国で廃プラがあふれ出ている。http://rief-jp.org/ct12/81050

 

 中国では輸入した廃プラスチックを手作業で仕分けして高温で溶かし、先の日本企業の例のように、ペレットにしたり、雑貨や日用品に再生して販売、輸出に回したりしてきた。しかし、処理工程で有害な廃水や残渣分の焼却で大気汚染を引き起こすなどの事態が問題化し、習政権の輸入禁止判断につながった。

 

 中国の輸入停止宣言から実施までに半年しかなかったこともあり、日本企業の準備は追いついていない。また廃プラを分別・再利用する設備を建設するにしても、時間の制約がある。このため、キャノンのように、廃プラの一定量は焼却や埋め立てに回さざるをえない状況だ。その分、中国で起きていた大気汚染問題が国内で発生することにもなる。http://rief-jp.org/ct12/75989

 

 中国以外の輸出国として、東南アジアへの輸出が急増している。またこれまで中国で輸入元となっていた企業が、東南アジアで廃プラ輸入の引き受け元となり、地元で摩擦を引き起こす事例も増えているという。こうしたことから、東南アジア各国でもタイのように輸入禁止の議論が起きるなど、各国で廃プラ規制が求められている。さらに東南アジアの各国は、元々、中国に比べて輸入許容量に限界もある。http://rief-jp.org/ct12/79844

 

 プラスチック循環利用協会(東京・中央)によると、16年の日本の廃プラ排出量のうち再生プラスチックや繊維の原料として再利用されたのは23%。このリサイクル・再利用の割合が高まれば、輸出分は減り、再生事業が活発化して日本経済にプラスとなる側面もある。

 

 リサイクル事業の日本環境設計(東京・千代田)は8月、古着や使用済みペットボトルから取り出した再生材で作る同社ブランドの衣料品を発売する。同社の高尾正樹社長は、中国の環境規制が追い風になって「ペットボトルフレークの調達価格は今後下がる」と予測している。企業は廃プラ排出量を減らしてESGリスクを下げる試みのほか、リサイクル能力や再生能力を増強することで、ESGプラス・ベネフィットを得る選択が求められている。

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180719&ng=DGKKZO33111530Y8A710C1TJ2000