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南極圏のオウサマペンギン、世界最大の集団繁殖地(コロニー)が、30年間で90%縮小 。気候変動も一因か。絶滅危機の懸念も。仏研究機関らが論文で指摘(AFP)

2018-08-01 09:00:41

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【7月31日 AFP】オウサマペンギンの世界最大の集団繁殖地(コロニー)が30年間で90%近く縮小したと警鐘を鳴らす研究結果が30日、発表された。

 

 アフリカの南端と南極のほぼ中間に位置する仏領クロゼ諸島(Crozet archipelago)ココン島(lle aux Cochons)に科学者らが最後に足を踏み入れた当時は、200万羽に及ぶオウサマペンギンで島が覆い尽くされていた。飛べない鳥のオウサマペンギンは体高が約1メートルに達する。

 

 だが、科学誌「アンタークティック・サイエンス(Antarctic Science)」に掲載された論文によると、最新の人工衛星画像とヘリコプターから撮影された最近の写真により、オウサマペンギンの個体数が急減した結果、20万羽が辛うじて残っている状況にあることが明らかになったという。

 

 定住型の鳥であるオウサマペンギンは、餌探しの時に成鳥が数日間海に出るが、渡り(季節移動)はしない。ココン島のコロニーがこれほど大幅に縮小した理由は謎のままだ。

 

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 論文の主執筆者で、仏シゼ生物学研究所(Centre for Biological Studies in Chize)の生態学者のアンリ・べイメルスキルシュ(Henri Weimerskirch)氏は「これはまったくの予想外で、特に深刻な出来事だ。なぜならこのコロニーは全世界のオウサマペンギンの3分の1近くを占めていたからだ」と指摘した。同氏がココン島のコロニーに初めて着目したのは1982年のことだった。

 

 気候変動が一因となっていることも考えられる。1997年に発生した特に強力なエルニーニョ(El Nino)現象では、インド洋南海域の海水温を上昇させ、オウサマペンギンが依存している餌の魚やイカをペンギンの採餌範囲が及ばない南方へと一時的に押しやった。

 

 その結果として、この領域にあるオウサマペンギンのコロニーすべてに「個体数の減少と繁殖成功率の低下が生じた」と、べイメルスキルシュ氏は説明した。

 

■絶滅危機レベルの再評価も

 

 2~7年ごとに発生する周期的な現象のエルニーニョは、地球温暖化によって増幅される可能性がある。また、地球温暖化自体も、より長期的な時間スケールではあるが、同様の結果を数多くもたらす。

 

子が親よりデカくなることも
   子が親よりデカくなることも

 

 実際に、べイメルスキルシュ氏と共同研究者らは先行研究で、気候変動が現在のまま進行することにより、ココン島を含む仏領クロゼ諸島が今世紀半ばまでに、オウサマペンギンが生存不可能な環境に変わることが大いに考えられるとしていた。

 

  生息地の移動は、近くに他の適した島が存在しないため、選択肢にはならない。群れの過密化などのその他の要因もまた、ココン島コロニーの縮小の一因となっている可能性がある。

 

 この他にも、ココン島の近くにある南アフリカ領マリオン島(Marion Island)と仏領アムステルダム島(Amsterdam Island)でオウサマペンギンを含む海鳥が発症した鳥類コレラも、可能性のある原因の一つに挙げられている。

 

 だが、べイメルスキルシュ氏とその他の研究者らが再度ココン島に足を踏み入れるまで、確かなことは誰にも分からない。うまくいけば2019年初めには現地調査を実施できる見通しだと同氏は話した。ラット、ネズミ、ネコなどの侵略的外来種が島内に侵入した可能性も考えられる。

 

 オウサマペンギンは現在、国際自然保護連合(IUCN)の「レッドリスト(絶滅危惧種リスト)」で「低懸念」に分類されているが、今回の最新データが絶滅危機レベルの再評価を促す可能性がある。

http://www.afpbb.com/articles/-/3184384?cx_part=top_category&cx_position=1