各紙の報道によると、南米のチリは、ビジネスで使用するプラスチック袋の使用を禁じる法律を施行した。プラスチック袋を法律で使用禁止にしたのは南米では初めて。大企業は6カ月、商店や中小企業は2年間の猶予期間の間に、段階的にプラスチック袋を廃止しなければならない。
3日付の同国の官報(Diario Oficial)に掲載された。それによると「衛生または食品廃棄防止に必要な」基本的包装以外のプラスチック袋は全面的に禁止される。段階的な廃止を完了するまでの当面の間は、1回の買い物で配布するプラスチック袋は2枚までに制限される。規制を守らなかった場合は、370㌦(約4万円強)の罰金を科せられる。
法案は6月1日に議会で可決されていた。しかし同国のプラスチック産業協会(Asipla)が違憲だとして憲法裁判所に提訴する事態となった。その憲法裁はこのほど、法案は有効とする判断を下していた。
チリ政府によると、同国内で年間に使われるプラスチック袋の総数は約32億枚で、国民1人当たり約200枚に相当する。使用されたプラスチック袋の90%は最終的には埋め立て地や海に捨てられ、鳥や魚が飲み込む問題等を顕在化させている。さらに破砕され微細化されたマイクロプラスチックが、プランクトン→魚類→人間という食物連鎖を引き起こしていることも注目されている。
先週末に開かれた新法施行を記念するイベントに出席したセバスチャン・ピニェラ大統領は「新ルールは、『よりきれいなチリ』に向けた大きな一歩となった。”投げ捨て文化”から脱して、リサイクルを軸にした健全な文化に切り替えたい」と法律の意義を強調。「世界には76億の人々が暮らしている。その一人一人が、地球を自分の所有物のように使い放題にするように汚染することはもはや持続しない」と警告を発した。
イベントでは、大統領自らが再生布で作ったバングを配って、国民一人一人に理解を求めた。
今回の法律は、今年3月まで任期を務めた前大統領の中道左派政権のミチェル・バチェレ氏が提案したもの。バチェレ氏は2014年にパタゴニア地方ですでにプラスチック袋禁止を実践し、禁止区域は昨年、沿岸部にも拡大されていた。
政権は中道左派から中道右派のピニェラ政権に移管したが、プラスチック廃棄物問題は、政治の右左に関係なく、地球規模の問題として引き継がれていた。
中米ではパナマが今年の1月に、同様のプラスチック袋のビジネス利用を抑制する法律を施行している。英国では2015年にプラスチック袋一つに付き、5ペンスの有料化に切り替えている。国連は昨年、法的拘束力はないが、プラスチックによる海洋汚染を防ぐ決議を採択している。