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台湾鉄道の特急脱線事故、列車の製造は日本車両製造(名古屋)、カーブでも速度を落とさず走行できる「振り子」機能が売り物(RIEF)

2018-10-22 13:25:11

taiwan13キャプチャ

 

  台湾で21日夕刻に脱線事故を引き起こした台湾鉄道の列車は、日本の日本車両製造(名古屋)が2013年に納入したものだ。同社は住友商事とともに、2012年に台湾鉄路管理局(TRA)との間で、車体傾斜式(いわゆる振子)列車を136両納入する契約を結んだ。今回事故を起こしたのは、納入第一号の特急列車「普悠瑪(ぷゆま)号」。同車両は、カーブでは車体をカーブの内側に傾けて、スピードを落とさずに走行できるのが特徴とされている。

 

 日本車両・住友商事とTRAの契約は約300億円。同列車の最大の売り物である「傾斜システム」は空気ばねの伸縮を利用したものと説明される。同システムは、車体制御機能付きの高さ調節弁(LV with Height Change: HCLV)、車体傾斜制御装置、ブースト装置で構成される。

 

taiwann12キャプチャ

 

 HCLVは、空気バネ高さの変動に応じて、空気を供給したり、排気することで、車体の高さを一定に保つ役割を果たす。曲線のカーブを通過する際には、HCLVの給排気が止まる中立位置を、外軌側は高く、内軌側は低くなるように制御して車体を傾斜させる。カーブを出る際には、それぞれの空気バネ高さをオフセットした中立位置に合わせて、傾斜を元に戻す仕組みだ。

 

 HCLVの稼動は、車体傾斜制御装置によって指示される。同装置は、走行する列車の速度センサーからの信号を積算して現在の走行位置を算出し、誤差調整をしたうえで、車両の地点を検地し、HCLVの駆動の指示を出す。ブースト装置は、内軌側の空気バネから外軌側の空気バネへ強制的に空気を移動させ、車両の傾斜速度を迅速に高め、空気消費量の削減を行うという。

 

車体傾斜(振り子)システム
   車体傾斜(振り子)システム

 

 車体の傾斜角度は最大2度で、カーブの曲線区間は一般の車両より25km/h早い速度で安定走行できる。列車は設計最高速度150km/h、営業最高速度140km/hの8両編成で運行される。

 

 HCLVシステムにはそれぞれの装置において、故障時のバックアップ機能も装備されている。車体傾斜制御装置が傾斜指令を計算・把握できない場合は、隣の車両の制御装置から指令を出すことが可能。また列車の走行地点を把握できない場合は、専用のバックアップラインを使用することになっている。さらにHCLVが、制御装置からの傾斜指令を受けられない場合には、あらかじめ傾斜角度の付いた位置にセットされた専用のバックアップLVに切り替えることになっている。

 

taiwan11キャプチャ

 

 今回の事故の原因が、車両の原因によるものかどうかは、現時点では明らかでない。緩やかなカーブ走行時の事故だけに、スピードの出し過ぎで、車両の傾斜制御装置の機能を上回る傾斜が生じた可能性もある。バックアップ設備が機能したのか等の検証が重要になる可能性がある。

 

 事故を起こした「普悠瑪号」は2013年2月から営業運転している。カーブでの安定走行の特徴に加えて、車両はアルミ中空形材を利用した計量構造。衝突安全性を考慮した衝撃吸収構造で、車両内は床耐火仕様、車椅子でも利用し易いユニバーサルデザインと、安全性と使い易さ、乗り心地の良さを実現した車両と説明されている。

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