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水道水を簡単に浄水できる携帯型浄水ボトル、信州大とトクラス社が共同開発。残留塩素や重金属の除去が容易に。水のペットボトルの使用減少で廃プラ対策への貢献も期待(RIEF)

2018-10-25 17:58:06

sishyu1キャプチャ

 

 信州大学と住設機器のトクラス(浜松市)は24日、水道中の残留塩素や重金属等を除去できる新素材を共同開発した、と発表した。両者は、同素材を活用して携帯型の水道水浄水ボトル「NaTiO(ナティオ)」を12月25日に発売する。これを利用すると、普通の水道水が「おいしく」「安全」な水に生まれ変わるという。ペットボトルの水が不用になり、プラスチックゴミ縮減にもつながりそうだ。

 

 (写真は、「ナティオ」開発を発表する信州大学の手嶋所長(左)と、トクラスの上川秀哉技術部副部長(右))

 

 新素材は、信州大が得意とする結晶育成技術「フラックス法」を用いて、三チタン酸ナトリウム(Na2Ti3O7)の結晶の形や原子の並び方を制御することで、層状の構造を作り、水が接触する面積を拡大、重金属イオンを短時間で除去できる材料を実現したという。

 

 新素材は、一方でミネラルなど水中に含まれる栄養素については、ほとんど吸収しないという。製品のナティオはナトリウム(Na)、チタン(Ti)、酸素(O)の元素記号から命名した。

 

紅茶の漉し器のように、上から水を押し、カートリッジに水を通して浄水する
紅茶の漉し器のように、上から水を押し、カートリッジに水を通して浄水する

 

 水道水には、消毒用の塩素の残留や、老朽化した水道管の場合は鉛管から鉛などの重金属が溶け出すリスクもある。水中の重金属等を除去する方法として、従来からイオン交換樹脂を使う手法がある。ただ、同樹脂は水を吸収して膨張するため、浄水カートリッジを大型化せざるを得ないという課題があった。また重金属除去の速度も遅い。

 

 今回の新素材は、粉末の結晶材料で、取り扱いが簡単なほか、少量コンパクトで、多様な重金属を迅速に除去できるというのが特徴だ。このため従来のカートリッジに比べて小型で高い性能を発揮するという。

 

 今回製品化する携帯型浄水ボトル「ナティオ」のカートリッジは、一つで120㍑分を浄化できる。カートリッジは約360回の繰り返し使用が可能なので、経済的でもある。また重さも約250gと軽く持ち運びやすい。

 

  価格は本体が2980円(税別)。約360回使える交換用カートリッジは3個で2980円(同)として売り出す予定。トクラスのウェブサイトのほか、一部の都内百貨店でも販売するという。

 

  使用用途は、水道水の浄化だけではなく、災害時などでの緊急な飲み水確保にも需要がありそうだ。さらに、プラスチックごみ増大の原因となっている飲料水のペットボトルを代替する可能性もある。信州大学の環境・エネルギー材料科学研究所の手嶋勝弥所長は「マイクロプラスチックが社会問題化するなか、ペットボトルを置き換えたい」と話している。

 両者は今後、同素材の活用を発展させ、ティーバッグ状にして水につけて浄水化できる商品のほか、蛇口に直結、シンク内に設置するタイプなどを開発する計画という。

https://www.toclas.co.jp/news/20181024_2/?lf=top083