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「クモより強いミノの糸」。興和と農研機構が、ミノムシから自然界最強の糸の抽出に成功。再生医療でのバイオマテリアル素材やプラスチック樹脂強化に応用可能(RIEF)

2018-12-06 11:44:44

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   「クモより強いミノの糸」--。医薬品メーカーの興和(名古屋市)と農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は5日、ミノムシから自然界でもっとも強度が高い糸を抽出する技術を開発できた、と発表した。これまで自然界最強とされてきたクモの糸よりも倍以上強く、熱にも強いという。今後、バイオマテリアル素材として、医療分野へ応用できる期待があるという。自然は素晴らしい。

 

  ミノムシはチョウ目ミノガ科(学名.Psychidae)で、オオミノガ、チャミノガと呼ばれる蛾の幼虫をいう。日本では幼虫が作る巣が、藁で作った雨具の「蓑」に似ているため、昔から「ミノムシ」と呼ばれて親しまれてきた。日本には20以上の種がいるという。

 

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 幼虫が吐き出して作り出すミノムシの糸は、タンパク質で構成される繊維。興和と農研機構は、自然界にある未利用の糸を産業分野などで活用するため2016年から共同研究拠点の「興和先端科学研究所」(つくば市)を設立して研究を進めてきた。10種類余の昆虫の中から、ミノムシの糸が分子構造が整っていてもっとも強度が高いことを見出した。

 

 糸の切れにくさを数値化したところ、既に世界で広く研究されているクモの糸に比べ、2倍以上の強さがあることがわかった。さらにミノムシの糸をプラスチック樹脂等と複合すると、樹脂の強度が大幅に改善されることも見出した。

 

 両社は1匹のミノムシから長さ100mの1本の長い糸(長繊維)を採糸する基本技術を考案し特許出願した。ミノムシを殺さずに採糸した後は、次の世代にミノムシの命がつながるようにし、ミノムシの人工繁殖方法や大量飼育方法を確立したという。

 

 再生医療の世界では、カイコシルクが組織支持材料(医療機器)として米国で販売されているなど、さまざまな研究が実施されている。ミノムシのシルクタンパク質についても、その強度特性を生かすことで、医療分野へ貢献できるバイオマテリアル素材となる可能性が期待されている。

 プラスチック樹脂に加えた場合、強度を数倍にまで高めることができるという。そうなると、自動車部品や電子部品、スポーツ用品などへの幅広い応用が見込める。今後、素材メーカー等との連携を強め、数年以内の実用化を目指す方針という。自然素材のため、環境への負荷が少なくなり、省エネの観点からも低炭素社会実現に貢献できるともしている。

https://www.kowa.co.jp/news/2018/press181205.pdf