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舞台俳優が、アスベスト吸引で中皮腫発症。「東京芸術座」の故加藤大善さん。労基署が初めて労災と認定(各紙)

2018-12-21 00:45:02

Asbestos2キャプチャ

 各紙の報道によると、劇団「東京芸術座」(東京都練馬区)の舞台俳優だった加藤大善(だいぜん)さん(当時70)が、2016年4月に死亡したのは、公演先の學校などでの舞台装置の取り付け作業中にアスベスト(石綿)を吸引したことが原因で、胸膜中皮腫を発症したとして、池袋労働基準監督署(東京)の労災認定を受けていたことが分かった。舞台俳優の石綿被害の労災認定は全国初とみられる。

 労災認定は今年7月。加藤さんの妻(68)と長女(35)らが記者会見し、明らかにした。加藤さんは、1974~80年の間、東京芸術座に所属し、年2回の旅公演などに参加、各地の学校や公共施設、体育館などでの公演活動の準備作業などにも取り組んできた。

 遺族らによると、加藤さんは公演先での準備作業で、石綿が吹き付けられた天井裏に入り込み、照明機材の取り付け作業なども手掛けることがあったという。遺族らはこうした作業の際に、石綿を吸引したと主張してきた。労基署は今年7月、「石綿が吹き付けられた天井裏で照明機材の取り付けをしていた」ことを原因とし、死亡との因果関係を認めている。

記者会見する遺族(右が婦人、左が娘)
記者会見する遺族(右が婦人、左が娘)

 ただ、加藤さんは劇団と雇用関係は結んでおらず、労災保険にも加入していなかった。だが劇団が報酬を払っていたことから、労基署は労働者と認定した。加藤さんは、劇団を退職した後、2014年12月に胸膜中皮腫を発症。その後、死亡した。加藤さんの死後、遺族が労災申請を行っていた。

 支援団体の「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」によると、これまで舞台設営に関わった人が石綿労災を認められたケースはあるが、舞台俳優としては初めてという。東京芸術座は「当時はまだ石綿の危険性は認識されていない時代で、どれだけ危険かも分からない中で作業が行われていた。ご遺族には哀悼の意を表します」とコメントした。

 

 記者会見した妻のはるみさん(68)は「どこで石綿を吸ったのかがわからずに発症した人たちもいるはず。そうした人たちが思い立つ契機になれば」話している。