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世界経済フォーラム(WEF)で、コカ・コーラとペプシコーラのCEOがそろって海洋プラスチック汚染問題の討議に参加。個社の対応を求める声に対して、業界全体対応を強調(RIEF)

2019-01-28 17:28:24

 

  スイス・ダボスで開いていた世界経済フォーラム(WEF)年次総会で、プラスチック汚染問題をテーマとしたパネルに、清涼飲料水市場で世界を二分するコカ・コーラ(Coca-Cola)とペプシコ(Pepsico)の両最高経営責任者(CEO)がそろって出席した。両CEOは、2030年までにペットボトル削減に向けて「大きな歩み」を進めると、この問題では共同歩調をとる姿勢を示した。

 

 パネルは「プラスチック経済の転換(Transforming the Plastic Economy」とのタイトルで開かれた。コカ・コーラのCEO,ジェームズ・クインシー(Jqames Quincey)氏と、ペプシコCEOのラモン・ラグアルタ(Ramon Laguarta)氏のほか、プラスチック製品を製造する米化学大手のダウ・ケミカル(Dow Chemical)CEOのジム・フィッタリング(Jim FItterling)氏、フランスの環境・連帯移行相担当大臣のブリュヌ・ポワルソン(Brune Poirson)氏、ベトナムの自然資源・環境大臣のタラン・ホング・ユオンハ(Tran Hong Ha)氏も出席した。

 

 pepshi3キャプチャ

 

 最初に発言したコカ・コーラのクインシー氏は、司会者から「プラスチック問題にコカコーラはどう対応しているのか」と問われ、「問題はコカコーラの問題ではなく、グローバルなチャレンジだ。すでにわれわれは、われわれの製品で使用したペットボトル等を回収する仕組みを進めており、複数の国では問題を解決済みだ」と強調した。

 

  世界で販売されるペットボトルは年間4800億本(2016年)あるとされるが、リサイクルのために回収されているのは半分以下。コカコーラは年間1100億本を販売している。同社は2020年までに先進国での回収率を75%に引き上げるとしている。ただし、海洋汚染の原因となっている途上国での回収目標は明確ではない。

 

 一方のペプシコのラグアルタ氏も、「わが社の飲料・食品の両事業において、システム内のプラスチック量を削減できる」と明言。2025年までにすべての飲料水の容器をリサイクル可能、生分解可能なものにすることを目指していると語った。

 

 ただ、生分解プラスチックをめぐっては意見が分かれた。容易を作る側のFItterling氏が「生分解プラスチックの使用にはもう少し時間がかかる。分解性のほか、飲料水等の中身の保全力の問題がある」と技術的な課題をあげた。ポワルソン氏も、「生分解プラスチックは分解時のメタン排出問題もある。こうした問題で常に代替品を考慮するのはやめたほうがいい」と語った。

 

コカコーラCEOのクインシー氏
コカコーラCEOのクインシー氏

 

 これに対してクインシー氏は、「単に容器をリサイクルするよりも、すべてのオプションについてのカーボン・フットプリントを考慮するほうが重要だ。プラスチックはガラス容器やアルミ缶等に比べると、CO2排出量は少ない」と現行のペットボトルへの批判が強すぎるとのスタンスを示した。また消費者がプラスチック廃棄物をどう問題視しているかは、国によって大きな差があり、リサイクルも90%以上を実現している国と、10%にとどまる国もある、と指摘した。

 

 ラグアルタ氏も「消費者がもっとも関心を示すのは、「(ペットボトルよりも)教育や健康の水準に関するものに対してだ」「企業は消費者の需要に対応しているだけ」と述べ、廃プラスチック問題への批判を行き過ぎとのニュアンスを示した。

 

ペプシコーラCEOのラグら亜氏
ペプシコーラCEOのラグアルタ氏

 

 ただ、ポワルソン氏はこうした見方に対して、フランスで続いている「黄色いジャケット」運動でも、人々は要求事項の中にプラスチック全廃を掲げていると指摘し、プラスチック汚染に対する消費者の関心がそれほど高くないとの業界代表の判断に異議を唱えた。

 

 コカ・コーラとペプシの両社は、グローバル市場では競い合っている。だが、今月初めに設立された、海洋プラスチック対策の国際的アライアンス(Alliance to End Plastic Waste:AEPW)では両社だけではなく、グローバル市場で競い合う世界約30の化学メーカーや関連企業が協調して参加している。日本の三菱ケミカルホールディングス、住友化学、三井化学の3社も加わっている。http://rief-jp.org/ct12/86198?ctid=65

 

 両CEOはAEPWの設立を業界全体の貢献例として指摘し、グローバルな事業者が協力してプラスチック廃棄物の削減に取り組むことを強調した。ラグアルタ氏は、こうしたグローバルな取り組みが「リサイクル化の促進と、循環型経済の構築につながる」との見方を示した。

 

 ただ、環境団体や専門家らは、業界で設立したAEPWのあり方に疑問を向ける向きも少なくない。各社の個別多様の環境負荷を、業界対応として集約することで、個別企業の責任が見えなくなる可能性があるためだ。またAEPWは15億㌦規模(5年間)の基金を立ち上げるが、グローバルなプラスチック汚染を本格的に実施するには、その程度の資金規模では不十分との批判もあがっている。

https://jp.weforum.org/events/world-economic-forum-annual-meeting/sessions/transforming-the-plastics-economy

https://www.cnbc.com/2019/01/24/coca-cola-and-pepsi-agree-on-the-plastic-waste-problem-but-the-solution-is-more-complicated.html