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EUが、プラスチック廃棄物の難物「タバコの吸い殻フィルター」の清掃資金の拠出を、たばこ業界に義務付けへ。日本も見習おう(各紙)

2019-01-29 08:30:34

tabako2キャプチャ

 

  各紙の報道によると、EUはプラスチックごみを減らす対策の一環として、たばこ業界に対し、路上等に捨てられたたばこの吸い殻を清掃するための資金拠出を義務付ける。廃プラスチック問題では、使い捨てプラスチック製ストローやレジ袋への風当たりが強いが実は、たばこの吸い殻フィルターは捨てられる量が世界一多く、分解までに長期間を要する厄介なものとしている。

 

 たばこのフィルターは生物分解可能な素材でできていると思われがちだ。だが、実際にはプラスチックの一種の酢酸セルロースが使われ、分解されるまでには最大で10年はかかるという。

 

 EUは、こうした「隠された問題」への対応として、使い捨てプラスチックを減らす対策の一環として制定した新規定の中で、たばこ業界に海岸や路上等で放置される吸い殻フィルターの清掃のための資金拠出を義務付ける。

 

プラスチック汚染の元凶の一たばこ吸い殻フィルター
プラスチック汚染の元凶の一たばこ吸い殻フィルター

 

 当初、EUの欧州議会は、たばこフィルターのプラスチックを2025年までに50%、2030年までに80%削減することをEU加盟各国に義務化する提案を支持した。しかし、たばこ業界の巻き返し等によって、この削減目標は退けられた。

 

 代わりに導入された規定で、たばこ会社に対し、啓発キャンペーンや路上等への灰皿設置などの清掃のための資金拠出を義務付けることとした。欧州議会は、フィルターに環境破壊の原因となるプラスチックが含まれていることを、たばこの箱に表示することなども求めている。

 

 年間に世界中で製造されるたばこは約6兆本という。このうち90%以上にプラスチックフィルターが付けられている。肺がん対策として1950年代から導入されている。確かに、フィルター付きたばこは、最も一般的な種類の肺がんの発症率は減る。

 

 しかし、実は、別の種類の肺がんである腺がんの発症率は増えるとされる。また1960年代には、フィルターで除去されるタールやニコチンこそが、愛煙家に満足感を与えていることが判明し、たばこ会社はフィルターをそのままにして、ニコチン等の吸収力を低減させて、フィルターを通りやすいようにしているという。

 

 つまり、フィルターは愛煙家の健康状態改善にはほとんど役立たなくなっている一方で、その多くが路上等に放棄され、環境問題を悪化させている厄介者の代表なのだ。フィルターの廃棄量は、年間100万㌧以上のプラスチックごみに相当する。

 

 世界保健機関(WHO)によると、ごみの投げ捨ての中でも特に横行するのが、たばこの吸い殻の投げ捨て。吸い殻の約3分の2は無責任に捨てられている。路上や側溝に捨てられた吸い殻は、排水を伝わって河川や海に流れ込み、長い年月をかけて、マイクロプラスチックに転換していく。

 

 最近の研究では、たばこの吸い殻を浸した水に魚を入れると、4日後に半分の魚が死ぬという実験結果も発表された。この実験についてサンディエゴ州立大学の専門家は、「たばこの吸い殻から海洋環境に有毒物質が染み出し、生物を死なせている」と指摘している。たばこは、「宇宙船地球号にとって明確な『敵』」と言わざるを得ない。

https://www.cnn.co.jp/fringe/35131894.html