HOME8.温暖化・気候変動 |1月は「世界が異常気象の月」だった。世界気象機関(WMO)が分析。北米の寒波は、北極圏での氷の溶解等の影響で大気の構造が変化した可能性。「温暖化進行が寒気を拡散」(RIEF) |

1月は「世界が異常気象の月」だった。世界気象機関(WMO)が分析。北米の寒波は、北極圏での氷の溶解等の影響で大気の構造が変化した可能性。「温暖化進行が寒気を拡散」(RIEF)

2019-02-04 13:31:51

WMO1キャプチャ

  世界気象機関(WMO)は1月の気候が世界的に異常な展開をみせた「異常月」だったと評価した。異常気象の原因として、北極圏では他の地域の2倍の早さで温暖化が進んでおり、大量の氷や雪が溶解していることが、北極圏で形成される「極渦(Polar Vortex)」の流れに影響を与えている可能性を示唆した。極渦は北極、南極の上空で生じる非常に強い西風の循環をいう。1月はその流れの変動が大きかったとみられる。

 WMOのまとめによると、1月は北米の内陸部で、五大湖が凍るなどの寒波が襲来、ミネソタ州南部では強風の影響もあって体感温度は零下53.9℃まで下がった。米国の過去の最高低温の48.9℃を下回った。その一方で、北極圏に近いアラスカ州や北極圏沿岸の大半の地域は平年より気温が高い状態だったという。http://rief-jp.org/ct12/86651?ctid=70

 

 WMOはこうした変化について、極渦を構成する北極圏上空のジェット気流が、中緯度地域での暖気の滞留との関係で、構造的な変化を起こした可能性があるとみている。極渦が変化する現象自体は新しいことではないが、現在は、気候変動の影響が構造的変化を高めている可能性があるという。

WMO2キャプチャ

 未曾有の寒波が北米を襲ったことで、トランプ大統領は「温暖化はどこへ行った?戻ってきてくれ」とツィッターした。だが、WMO事務局のPetteri Taalas事務局長は、「北米の寒波は、気候変動を否定するものではない。短期的な気候変動と長期的な気候変動とを見分けねばならない」と指摘している。

 

 大寒波は欧州も襲った。オーストリアのチロル地方では、1月の前半だけで451cmの雪が降った。一世紀に1回起きるかどうかという大雪だったという。スイス東部でも長期平均の2倍の降雪となった。アルプス地方だけでなく、ドイツでも例年にないほど雪が降り、寒い月だった。地中海地方や中東の一部でも厳しい冬嵐が吹いた。

 

 アラビア半島ではエジプトからサウジアラビア、バーレーン、カタール、イラン、UAE等、人々の民族・宗教対立等とは関係なく、地域を等しく覆う広範な砂嵐が吹き渡った。パキスタンと北部インドでは、豪雨が続いた。インド北部では豪雪となり、雪崩警報が発令された。

 

 一方、南半球は夏。オーストラリアでは昨年末以来の猛暑が続き、南オーストラリア州のポートオーガスタでは最高気温49.1℃と過去最高気温を記録した。同国南部を中心に各地で記録的な猛暑が続いている。猛暑の影響で各地で山火事、野火が発生。原生林の多いタスマニア島では44箇所で火災が起き、島中央部では4万ha以上が消失した。山火事の煙は、ニュージーランドからも見えたという。http://rief-jp.org/ct8/86492?ctid=70

 

 南米のチリでも猛暑が続き、最高気温は40℃を超えた。アルゼンチンも同様。アルゼンチンの北東部からパラグアイ、ウルグアイ、ブラジルにかけての地域では長期間にわたる豪雨が発生、各地で洪水が起きた。アルゼンチンの Resistencia という街では1月8日一日だけで、224mmの記録的な降雨があった。

https://public.wmo.int/en/media/news/weather-january-month-of-extremes