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日本・東アジアの漁業資源、地球温暖化と乱獲の影響で激減。 日本海、黒潮海流がもっとも減少率高く。米大学チームが研究論文で指摘(RIEF)

2019-03-01 16:32:09

CNN1キャプチャ

 

  地球温暖化の進展と、乱獲の影響で世界中の魚類が絶滅の危機にさらされ、特に、中国と日本の近海ではすでに漁業資源が最大で35%も減少していることが、米大学の研究チームの論文で明らかになった。研究チームは「温暖化による漁業資源の減少は、将来生じる仮想ではなく、すでに起きている現実だ」と指摘している。

 

  論文は米ラトガース大学(Rutgers University )のチームがまとめ、28日の科学誌サイエンス(Science)に掲載された。同チームは、世界の漁業と海面温度に関する統計を元にして、1930~2010年の持続可能な漁獲量の推計を行った。対象は魚類と貝類両方。その結果、温暖化による海洋の温度上昇の影響で、長期的に個体数の減少につながらない持続可能な漁業による漁獲量は、この間に平均で4.1%減少したことがわかった。

 

 対象地域は太平洋、大西洋、インド洋等、世界の5大海洋とし、その中には東シナ海や、北海なども含めている。漁業の盛んな東シナ海と欧州の北海周辺の減少率は著しく、15~35%の減少率となっている。最大で平均の8倍という減少ピッチだ。

 

人間さん、ええ加減にしてくれよ~
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 研究チームのマリン・ピンスキー同大学準教授は「すでに世界中の漁業が海洋温暖化の影響を受けていることを確認し、率直に驚いた」と述べている。チームの代表のカリフォルニア大学サンタバーバラ校の科学者、クリス・フリー氏は「漁業者には、過剰漁労(乱獲)を減少させ、漁業活動に気候変動の影響を組み込んで、持続可能な漁業を再建することを勧告する」と警鐘を鳴らしている。

 

 漁業資源は、世界中の人々の食料と栄養を支えている。同氏は、各国の政策当局に対しても、「地域間で漁獲影響の差が出ていることを踏まえて、貿易交渉などに際して、漁獲量の減少の著しい国と、そうでもない国との格差を埋めるような工夫が必要」と提唱している。

 

 調査で、特に漁獲量の減少が激しかったのは日本海、東シナ海、黒潮海流などのアジア近海地域と、北海、スペインなどのイベリア半島岸、英国とアイルランド周辺のCeltic-Biscay Shelf regionsなど。東シナ海や日本近海の黒潮では、過去80年の間に漁業資源が最大で35%減っていた。逆に海温上昇で漁獲量が増えた地域もある。欧州のラブラドルーニューファンドランド一帯、インド洋、米国東海岸のNortheast U.S. Shelf regionsなどだ。

 

 東アジアや北海周辺での漁獲量の減少は、温暖化の影響に加えて、歴史的に乱獲が多く、「東アジアの生態系は、生産力が激減している。この地域は特に急激な温暖化が進んでおり、両面で漁獲量が急減している」(フリー氏)。

 

 人類由来のCO2排出量の増大で起きている温暖化の加速と、人類の旺盛な食欲に由来する魚類の乱獲との両方の影響で、漁業資源は次第に減少していることになる。また研究者たちによると、乱獲の影響で魚類の繁殖能力が減退し、温暖化の影響を受け易くなっている可能性もあるという。

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-02/ru-ccs022219.php

https://newbrunswick.rutgers.edu/