HOME12.その他 |第4回国連環境総会(UNEA4)、エチオピア機墜落事故で参加者や国連職員に多数の犠牲者。廃プラ対策では数量目標や日本の作業部会設置案は合意されず。米国が大きな「カベ」に(RIEF) |

第4回国連環境総会(UNEA4)、エチオピア機墜落事故で参加者や国連職員に多数の犠牲者。廃プラ対策では数量目標や日本の作業部会設置案は合意されず。米国が大きな「カベ」に(RIEF)

2019-03-17 01:48:22

UNEP11キャプチャ

 

 ケニアのナイロビで開いた第4回国連環境総会(UNEA4)は15日、廃プラスチックによる海洋汚染対策で、2030年までに使い捨てプラスチックの大幅削減を求める閣僚宣言を採択し、終了した。ただ、数量目標の合意はできず、日本提案の作業部会設置も見送られた。会議直前に起きたエチオピア航空の墜落事故で、国連職員が22人、英、カナダなどの会議参加者、通訳者、学者ら、少なくとも10人強が犠牲になるという、沈鬱な雰囲気の中での会議だった。

 

 (写真は、航空機事故の犠牲者を悼むローソクの火が灯された会場)

 

 11日から5日間の会期の初日には、航空機事故の犠牲者を悼む黙とうが捧げられた。最終日に閣僚宣言が発表されたが、最大の課題のプラスチック廃棄物対策について「持続的でないプラスチック製品の使用と廃棄が生態系を損なっている問題に取り組む」と指摘し、「2030年までに使い捨てプラスチック製品を大幅に減らす」ことで合意した。代替品の開発等で企業と協力することも盛り込んだ。

 

 ただし、同宣言は、厳しい規制を嫌う米国の賛同を得られず、拘束力のない自主的な約束にとどまった。日本がノルウェー、スリランカと共同提案した「海洋プラスチックおよびマイクロプラスチック(MP)に関する決議」は採択されたが、廃プラの削減策などを議論する作業部会を国連に設置する案は米国の賛同が得られず見送られた。

 

多くの犠牲者が参加できなかったUNEA4
多くの犠牲者が参加できなかったUNEA4

 

 宣言した「2030年までに使い捨てプラスチック製品を大量に減らす」との努力目標も、当初案では「2025年までに廃止する(phase out single-use plastics … by 2025)」だったのが、大幅に後退した。日本政府は、6月に大阪で開催する主要20カ国・地域(G20)首脳会議で、効果的な海洋プラスチック対策での合意を取り付けたい考えだが、先行き不透明な情勢だ。

 

 会議に参加した環境NGOらは大いに不満を漏らした。「Break Free From Plastic」、「 IPEN」、 「Plastic Change」、「 No Waste Louisiana」、「Coare」などの各団体。彼らは「宣言は全く不十分」と批判している。

 

 「会議に参加した多数の国々が、廃プラスチック規制は緊急であり、プラスチックの製造から使用、廃棄までのライフサイクルをカバーする野心的でグローバルな行動が求められることに合意した。しかし、米国に率いられた少数の国々が、思い切った宣言に待ったをかけ、交渉を遅らせた」と。

 

 閣僚宣言の表現を「玉虫色」にすることに対しては、プラスチック汚染被害が著しいフィリピン、マレーシア、セネガルなどの国々が、強く反対した。だが、大手石油企業を抱える米国が「カベ」となって立ちはだかった。

 

 米エネルギー企業は今後10年間以上にわたって、シェール油・同ガスの開発投資に巨額の資金を投じる計画を推進している。このため、石油製品であるプラスチックの需要減少につながる宣言に対しては、同じ産油国であるサウジアラビア等とともに「ブレーキ役」として共闘した形となった。

 

 現在、世界のプラスチック生産量は年間3億㌧以上とされる。ExxonMobile ChemicalやShell Chemicalなどが、新規建設を予定している石油精製設備が稼働すると、プラスチックの生産能力は10年間で、さらに4割も増えるという。

 

 国連環境総会の議長を務めたエストニアの環境相のSiim Kiisler氏は「すべての国々の同意を得られる決議は困難だ。環境はターニングポイントに差し掛かっている。われわれには、饒舌な言葉は必要ない。必要なのは、各国の具体的なコミットメントだ」と強調している。

 

 航空機事故の犠牲者を悼む半旗を掲げて始まった4回目のUNEA。会議のとりまとめも、納得感のいく内容とはほど遠かった。会議参加者にとって、温暖化対策、プラスチック対策、生態系対策のいずれもが、「制御不能」の航行に近くなりつつあるように映ったのではないだろうか。

https://www.ciel.org/wp-content/uploads/2019/03/Marine-LItter-and-Microplasticsk1900897.pdf