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海洋汚染のマイクロプラスチックと、温暖化による海温上昇の影響、連動。温暖化で白化したイソギンチャクほど、プラスチックを「食べる」。米カーネギー大学研究チーム報告(RIEF)

2019-04-01 09:00:47

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 世界的な課題となっている海洋に漂うマイクロプラスチックを、イソギンチャクが食べ、特に温暖化の影響で白化したイソギンチャクは、健康なものよりも長期間、体内に留めるということが、米カーネギー大学の研究チームの調査でわかった。同チームは、温暖化の影響とプラスチック汚染が関連していることを指摘している。

 

 研究チームは、同大学のManoela Romanó de Orte氏、 Sophie Clowez氏、 Ken Caldeira氏で構成した。研究成果は米環境研究誌の「Environmental Pollution」に掲載された。

 

 イソギンチャクがマイクロプラスチックを食べていることが検証されたのは初めて。イソギンチャクはサンゴとともに生息しており、サンゴ礁の生態系がプラスチック汚染の影響を受けていることを示す結果にもなった。

 

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 研究対象としたのはマイクロプラスチックのうち、衣服の洗濯などやロープ、漁網などの漁具から発生するマイクロファイバー。マクロファイバーは世界中の海洋から検出され、最近は人間が食べる魚類や貝類からも検出され始めている。

 

 研究チームは、海洋のマイクロプラスチックが脆弱なサンゴ礁のエコシステムに影響を与えているかを調べることを主とした。プラスチックは食料と混同され、他の有害な物質を付随させる可能性がある。そこでチームは、実験室において、健康なイソギンチャクと、温暖化の影響で海温が上昇、白化したイソギンチャクのマイクロファイバー(ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンの3種)の摂取状況を調べた。

 

 その結果、ナイロンのマイクロファイバーは、健康なイソギンチャクの4分の1によって摂取・消化された。マイクロファイバーを、観賞魚のエサなどに用いられる小型のブラインシュリンプに混ぜて与えた場合は、健康なイソギンチャクの80%がナイロンだけでなく、3種のプラスチックをすべて摂取したという。

 

海温上昇で、各地で白化が進むサンゴ礁
海温上昇で、各地で白化が進むサンゴ礁

 

 白化したイソギンチャクの場合、60%がナイロンを摂取したほか、20%がポリエステルをそのままで摂取した。食料のブラインシュリンプと混ぜると、80%が3種のマイクロファイバーをすべて摂取した。

 

 体内に取り入れられたマイクロファイバーは、3日目には排出されるが、白化イソギンチャクの場合、健康なイソギンチャクよりも長い間体内に留まったという。ただ、自然界にはマイクロプラスチックが絶えず供給される環境にあるので、イソギンチャクは慢性的にマイクロファイバーを摂取する結果になっていると推察される。

 

 チームメンバーの一人、Caldeira氏は「今回の研究で、プラスチック汚染と気候変動は、サンゴ礁にとって、『ワンツーパンチ』のパッケージのようになっている」と指摘している。すなわち、温暖化の進行で海温が高まってサンゴ礁の白化が進むと、生物たちは、よりプラスチックを摂取し易くなり、体内に留め易くなる、というわけだ。

 

 プラスチック汚染と温暖化の進行の相互作用で、サンゴ礁の劣化や生態系の破壊がさらに加速する可能性が現実味を帯びてきた。

 

https://carnegiescience.edu/news/sea-anemones-ingest-plastic-microfibers