温暖化の進展で北極圏の海氷が減少、ホッキョクグマの食糧不足が深刻になっているが、ハラペコのホッキョクグマが、エサを求めて約700kmも放浪、行倒れ寸前で、村人に救われるという出来事があった。ロシアの極東部の村でのこと。クマは健康を回復後、ヘリで生息地に空輸されるという。
発見されたホッキョクグマは、ロシア極東のカムチャッカ半島の付け根部分にあるチリチキ(Tilichiki)村に、先週現れた。「この辺りでは、茶色のヒグマが現れることは多いが、白いクマは珍しい」(村人)。
ロシア極東部のホッキョクグマの生息地は、ベーリング海峡に面したチュクチ半島の周辺とされる。チリチキ村からは、約700kmも離れている。しかも、クマはやせてふらふら状態で座り込んでしまった。
村人が近寄っても、攻撃的な行動を示す力も残っていない様子。可哀そうに思った村人たちは魚を与えて、“看病”にあたった。その後、徐々に体力を回復しているという。
ホッキョクグマの様子をビデオで観察した環境NGOのグリーンピースロシアのウラジミール・チュプロフ(Vladimir Chuprov)氏によると、「このクマは、北カムチャッカのチュクチ地域から、海氷に乗っかったりしながら、放浪してきたとみられる」。
チュプロフ氏は「温暖化の影響が進めば進むほど、北極圏の海氷は減少し、ホッキョクグマは食糧とするアザラシ等を捕獲できない状態が続く。クマは生き残るため、新たな生息場所を探す以外にない。その結果、人間の生息環境との接触は免れない」と指摘している。
チリチキ地区を管轄するロシア当局は、ホッキョクグマの体力回復を待って、1~2日中に捕獲し、その後、ヘリコプターで生息地のチュクチ地区に運ぶ予定という。