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「気候変動のための登校拒否」を続けるスウェーデンのグレタさんの行動の影響で、同国での鉄道旅行需要が急増。一人当たりCO2排出量は航空機利用の6分の1弱(RIEF)

2019-05-01 02:01:45

Greta21キャプチャ

 

 スウェーデンの16歳の少女、グレタ・ツゥーンベリさんが気候変動対策の実施を求めて、欧州各地に出かけているが、グレタさんの行動で「鉄道利用」が改めて注目されている。彼女は、気候変動への影響の大きい飛行機やCO2排出量の多い自動車等を使わず、鉄道を主な移動手段としている。

 

 グレタさんはローマ法王との対面でバチカンに出かけたほか、欧州委員会に呼ばれてベルギーのブラッセルに、スイス・ダボスの世界経済フォーラム(WEF)に参加、英国議会での議員たちとの面談と、今年に入ってだけでも、欧州各地に出かけては、「大人たち」に、効果的な気候変動対策を迅速に講じるよう訴えてきた。

 

 スウェーデンのストックホルムから、それらの欧州諸国に行く際、ビジネスパーソンなら飛行機が定番。だが、彼女は飛行機による温室効果ガス排出量の多さを指摘、一切、飛行機は利用しない。彼女の説得で、著名なオペラ歌手でもある母親のMalena Ernman さんも航空機利用での海外公演を断っているという徹底ぶりだ。

 

鉄道は、大体、時刻表通りに到着
鉄道は、大体、時刻表通りに到着

 

 グレタさんは、海外旅行をする際、ストックホルムにある小さな鉄道旅行専門の旅行会社で予約をとるという。旅行店を経営するIvar Karlsson氏によると、グレタさんの鉄道移動を知った顧客からの予約注文が増加、今年1月には、2年前の8倍もの注文が殺到。毎日16時間勤務、休みをとれない週もあったという。

 

 Karlssonさんのオフィスは、彼と共同経営者のMaria Peterssonさん、それに6人の正規社員が働く。増える電話とEメールでの対応に追われる日々が続いているという。「年間を通しても去年の倍の需要がある。もっと人を雇えればスムーズに処理できるのだが」(Kalrssonさん)。

 

 元々、スウェーデンでは鉄道旅行を好む層が一定数いる。彼らは航空機を「flygskamflight-shame)」と呼んで毛嫌いする。 加えて気候変動に対する国民の敏感度も高い。

 

 昨年夏は国内の各地で、過去もっとも高い気温を記録したほか、乾燥度も過去最悪、森林火災も最悪レベルでの発生と、気候変動の影響が顕在化していることも大きい。先月初めにスウェーデンの気象台の公表によると、同国の気温上昇はグローバル平均よりも倍近く高いという。

 

Great23キャプチャ

 

 鉄道旅行と航空機利用では、CO2排出量は大きく異なる。鉄道の場合、km当たりのCO2排出量は15gだが、航空機の場合は6.7倍の100gも排出する。World Wildlife Foundationの調査では、スウェーデン人の5人に一人は、環境負荷を理由として、航空機よりも鉄道を選ぶと回答している。

 

 こうした顧客ニーズは、Karlsson氏の旅行会社等が参加するFacebookサイトが8万人のフォロワーになっていることでも立証される。他の旅行会社も「鉄道好き需要」を重視し始めている。たとえば、大手旅行社トマスクック傘下のスウェーデン旅行会社は、ストックホルムからスイスのダボスまでの貸し切り鉄道パッケージ旅行を売り出した。

 

 グレタさんは、Karlssonさんのアドバイスにより、父親の俳優であるSvante Thunbergさんとともに、長距離旅行の場合、普通切符でファーストクラスのインターレイルを利用できる特典切符を利用したりしているという。

 

 二人の鉄道旅行による年間CO2排出量は、それぞれ400kgになるが、スウェーデン人の年間平均排出量の10分の1の計算になる。

 

 Karlsson氏によると、「グレタさんは国際的な『flygskam』運動としては平均的なレベル。もっと徹底しているのが、スキーコメンテーターで知られるBjorn Ferry氏。Ferry氏は昨年、鉄道で移動できるイベントにしか出席しなかった」という。

 

 Karlsson氏は、今回の鉄道需要熱について、ベルリンの壁が崩壊して東西欧州交流が始まった1980年から90年代にかけた時期にも、同様に鉄道利用での東欧旅行ブームが起きた。東欧の空港設備や道路事情の悪さが主な理由だった。しかし、当時のブームは間もなく平準化した。

 

 しかし、「今回のトレンドはもっと続くだろう。いったん人々が鉄道旅行の安定・安全性に気付くと、もはや飛行機には戻らないと思う。何しろ、地に足がついているのだから」(Karlssson氏)。

https://www.theguardian.com/environment/2019/apr/26/greta-thunberg-train-journey-through-europe-flygskam-no-fly