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廃プラ対策で「バーゼル条約締約国会議」、「汚れた廃プラ」も輸出入規制の対象に追加へ。2021年に発効。ノルウェー提案に日本等も賛同、共同提案国に(RIEF)

2019-05-11 18:30:21

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   有害廃棄物の国際的移動を規制するバーゼル条約締約国会議は10日、汚れたプラスチックごみを輸出入の規制対象に加える条約改正案を採択した。汚れた廃プラはこれまでリサイクル資源として輸出されてきたが、今後は輸入国政府の同意がなければ輸出できなくなる。

 会議はスイス・ジュネーブで開いていた。改正条約は2021年1月に発効する。実際の運用は各国が国内法を条約に連動して改正することになる。改正案は、ノルウェーが最初に提案し、その後、日本やスイス、ザンビアなどが共同提案国に名を連ねていた。廃プラに関する初の国際的な法規制となる。

  バーゼル条約は国連環境計画(UNEP)が1989年に採択した法的拘束力のある国際条約。有害廃棄物の国境を越えた移動を規制する。国内処理が原則で、輸出の際は相手国に事前通告して同意を得ることを義務付けている。現在は医療廃棄物や廃油が対象で、プラスチックは一部を除き対象外となっている。

スイス・ジュネーブで開いたバーゼル条約国際会議
スイス・ジュネーブで開いたバーゼル条約国際会議

 会議では規制対象とする「汚れた廃プラ」の範囲をめぐって対立したが、最終的に、 「contaminated、 mixed、or  unrecyclable plastic waste」と位置付け、汚染や他のごみの混入が「ほとんどない状態」のものを除く廃プラはすべて規制することで合意した。

 

  改正案には、廃プラ輸出で世界最大の輸出国である米国を含め、複数の国が反対した。ただ、米国はバーゼル条約自体に署名しておらず、改正案を阻止できなかった。

 

 日本は、現行のバーゼル条約に基づき、規制対象となる廃棄物の輸出に際しては、輸入国の同意に加え、輸入国に日本国内と同等の処理体制がないと輸出を認めないと国内法で定めている。輸出先のアジアなど途上国で日本と同じレベルの処理体制の国はほぼないことから、日本からの汚れた廃プラの輸出は事実上、できなくなる。

 

ノルウェーの提案内容
ノルウェーの提案内容

 

 追加規制の対象となる廃プラは、飲み残しや、たばこの吸い殻が入ったペットボトル、使い終えたままのシャンプーの容器、食べ残し付きの弁当箱、土や石が交じった状態の農業用シートなどが想定される。

 

 日本の年間の廃プラの排出量は約900万㌧。このうちリサイクル資源として約143万㌧(2017年)を輸出した。これまで日本を含む先進国から「リサイクル資源」として廃プラを受け入れていた中国が同年末に輸入を原則禁じたため、2018年には代替輸出先の東南アジアなどに廃プラがあふれるという問題が噴出した。

 

 リサイクル資源の名目で国際取引されている廃プラが世界中の海洋汚染の原因の一つになっている。輸入国で適切に処理されず、海洋に流出、紫外線や波の影響で微細なマイクロプラスチックに分解される。それらのマイクロプラスチックは魚介類の体内に取り入れられ、人間の食生活にも影響してことが指摘されている。

 

 今回の規制では当初、廃プラ全体の規制を求める動きがあがったが、実際のリサイクル利用との峻別や、規制を有効に機能するための政策対応のコスト等が課題となっていた。そこで、提案国のノルウェーは昨年秋に、「リサイクルに適さないほど汚れた」ものを規制する付属書改正案を提案し、これに日本などが賛同し、追加規制の形で議論が進んだ。

 

 日本は、昨年6月にカナダで開いた主要7カ国(G7)首脳会議で、プラごみ削減の具体策を各国に促す「海洋プラスチック憲章」に米国とともに反対し、国内外から批判を浴びる「政策的失敗」をしていた。今年6月に大阪でG20首脳会議を開くことから、政府は廃プラ対策を見直し、ノルウェー案を支持する積極姿勢に転換している。

http://wiki.ban.org/images/a/a4/2019.04.30_EIA-CIEL-BAN-IPEN_Norwegian_Proposal_to_Amend_the_Basel_Convention.pdf