火災で焼失したパリのノートルダム大聖堂の再建案で、太陽光発電と屋上菜園を設けた「グリーン教会」建設の提案。ベルギーの設計事務所(RIEF)
2019-05-12 16:48:59
火災で焼失したパリのノートルダム大聖堂の再建計画として、ベルギーの建設事務所が、ガラスの屋根と太陽光発電システム、屋上菜園を備えた「グリーン教会」案を提案している。菜園で栽培した野菜や果物はホームレスに無償で配分するという。プロジェクト名は「再生」や「再創造」を意味するギリシャ語起源の「パリジェネシス( Palingenesis)」。
このユニークな「再生ノートルダム大聖堂」を提案したのは、自然と建造物の融合をテーマに世界中でユニークなグリーンビルディングを設計・建造しているビンセント・カレボー建築事務所(Vincent Callebaut Architectures)。フィリップ仏首相が先月、再建計画の国際コンペを呼び掛けたことから、同社の代表、カレボー氏が拠点を置くパリ事務所が提案した。
最大の特徴は、消失した尖塔の再建。ガラスとオーク材、カーボンファイバーでできた屋根が大きなカーブを描いて尖塔を立ち上げる構造になっている。尖塔の先端には、焼け跡から見つかった風見鶏の像が元通りに取り付けられる。
伝統の尖塔のイメージを踏まえながら、屋根に張り付けられるガラスは、太陽光発電機能を備える。ところどころに、シロアリの巣からヒントを得たという換気孔を設けており、夏季の温度上昇を調整できる。冬季は、尖塔の内部にたまる温かい空気を暖房に活用する。
太陽光発電の電力は、燃料電池として蓄えられ、教会内の各種の電源に使用する以上の「ポジティブ発電」が見込まれる。また屋上ガラスからの採光は教会内にも取り入れられ、以前にも増した荘厳な光の空間を醸し出す設計になっているという。
ガラス張りの屋上では、慈善団体やボランティアが果物と野菜を栽培する。屋上栽培では養殖と水耕栽培を組み合わせた 「 Aquaponics」や、自然のエコシステムを参考に自己維持型の農業システムを取り入れた持続可能な建設であるパーマカルチャー等のコンセプトを採用する。
年間収穫量は最大21㌧を見込んでいるという。「パリ産野菜」は、市内のホームレスたちに無料で配るという。収穫時には、教会前の広場で、毎週、ファーマーズマーケットを開催することも想定している。
設計したビンセント・カレボー事務所はこの案で「しなやかな、環境にやさしい未来の象徴」を目指し、「人間と自然のよりフェアな共生関係」を提示するとしている。ユニークな「グリーン教会」のアイデアがパリっ子の心をつかむかどうか。