アイスランド、同国を訪れる観光客向けに「高級水道水」ブランドキャンペーン展開へ。水のペットボトルより水道利用を促し廃プラ対策に。東京の水道水キャンペーンもマネしてみては(RIEF)
2019-06-10 09:00:41
アイスランドは、プラスチックボトル削減のため同国を訪れる観光客向けに、水道水の利用を進めるキャンペーンを始めた。高級水道水「 Kranavatn」のブランド名で、空港やホテル等で詰め替え用の容器を配布する。観光客のペットボトル使用を減らすとともに、アイスランドの水の品質の高さをアピールする狙いもあるようだ。
キャンペーンは同国のツーリスト協会が環境省とともに展開する。同国を訪問する観光客やビジネス客は、事前に、Kranavatn challenge onlineにアクセスすることで、水道水を入れることのできる詰め替え用ボトルを受け取るバウチャーを入手できる。
空港やホテル、バー、レストラン等でこのバウチャーを提示することでボトルを受け取り、旅行中、どこでも自由に水道水の供給を受けることができる。ボトルは帰国時に返せば、バウチャーの料金も戻ってくる。つまり無料で水を利用できるわけだ。
旅行客等はこのボトルを旅行中、携帯することでペットボトルを使わない「責任ある旅行者」であるというブランド価値を得ることになる。
アイスランド当局がこうしたキャンペーンを始めるのは、明確なデータに基づく。欧米を中心とした約1万6000人を対象とした調査で、ほぼ3分の2の人々が、海外旅行の際に自国にいるよりもボトル飲料を飲むことが判明した。その大半の理由は他国の水道水は、過剰な化学処理や不純物等の存在で、健康に悪いのでは、との思い込み等に基づくという。
アイスランドは氷河の水を源としている。環境省によると、同国の主要な水道水の大半は過剰な化学的処理を加えない一方で、安全管理も極めて高い水準にある。数千年にもわたって氷河が作り出した水が、溶岩のフィルターで漉されるという自然の浄化システムによって、完全にフレッシュで、「おいしい」。まさに「高級水道水 :Kranavatn」のブランドにふさわしい、とアピールしている。
水道水にブランドをつけるというのは半分ジョークでもある。ただ、水道施設の整った先進国で、観光客がペットボトルの水の代わりに、水道水を安心して飲むようになると、グローバルベースでもペットボトルの消費量が減る期待があるのも間違いない。
水道水を安心して飲めるキャンペーンは、日本でも東京都が先行して実施している。「安全でおいしい水プロジェクト」として、「東京水」のブランドで都庁や上野動物園などで販売している。
ただ、アイスランドと違うのは、氷河の自然水を強調するアイスランドに対して、「東京水」は「通常の浄水処理に加え、オゾンの強力な酸化力と生物活性炭による吸着機能を活用した高度浄水処理」をアピールしている。
最大の問題は東京では、「東京水」をペットボトル入りで売っていることだ。プラスチック対策の視点が完全に欠けている。またアイスランドが詰め替え容器の料金を使用後は返還する「無料方式」なのに対して、東京都は収益源のひとつに位置付けている。せこい、感じもする。
アイスランド環境相のGuðmundur Ingi Guðbrandsson氏は「Kranavatnのブランドは、観光客に使用済みプラスチックの使用を減らし、観光客、消費者にも『責任ある消費行動』を促すことにつながる」と強調している。この夏、アイスランドに水を飲みに行く観光客が増えるかもしれない。