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日本からの流出したプラスチックごみ、およそ400日で米西海岸、カナダ、アラスカに漂着。1000日後にはフィリピンなどにも拡散(各紙)

2019-06-12 17:05:37

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  各紙の報道によると、日本から大量のプラスチックごみが海に流出した場合、アメリカ西海岸や東南アジアに漂着するなど、太平洋の広い範囲に影響を及ぼすことが、土木研究所寒地土木研究所の岩崎慎介研究員のシミュレーション解析で明らかになった。岩崎氏は地球規模の対策が必要だと指摘している。

 岩崎氏は、日本の河川から年間6万㌧のプラスチック等が廃棄されているとの先行研究を踏まえて、北海道と東京、それに福岡の主要都市から、全体の約1割の約6300㌧のプラスチックごみが海に流れ出したと想定し、その拡散状況をシミュレーションした。

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 その結果、海流(黒潮等)や偏西風などの影響で、多くのごみが太平洋を帯状に漂ったあと、およそ400日で、アメリカの西海岸やカナダ、アラスカに漂着することがわかった。1000日余りたつと、一部は、フィリピンなど東南アジアにまで漂着、日本の沿岸部にもとどまるなど、広範囲に影響を及ぼす。実際にも2011年の3月11日の東日本大震災で津波とともに流出した家屋等がゴミとなり、太平洋に広範な帯状になって漂ったことも記録されている。http://rief-jp.org/ct12/78800

 流出ゴミのうち、レジ袋やペットボトルなどのプラスチックごみは、クジラやウミガメ、魚などが餌と間違えて食べるほか、波や太陽の影響で、微細化されたマイクロプラスチックとなって、生態系へ深刻な影響を及ぼす懸念が指摘されている。

 岩崎氏は「日本から出たごみが遠くの国にも迷惑をかけるという認識を持ってほしい。もっと多くの国がより早くプラスチックの削減に取り組まないといけない」と述べ、地球規模の早急な対策が必要だと指摘している。

太平洋全体に拡散する
太平洋全体に拡散する
 今回のシミュレーション結果について、プラスチックの海洋汚染の問題に詳しい九州大学応用力学研究所の磯辺篤彦教授は、「海流は複雑で速いため、日本から出たごみは、数か月であっという間に太平洋にたどりつく。一人一人がごみを出し海にたまった結果、多くの国に影響を与える、地球全体の問題だということがわかると思う。こうしたごみの動きを実際に目にすることはなかなかないので、とてもインパクトのあるシミュレーションだ」と評価している。
 国連によると、世界では年間800万㌧を超すプラスチックごみが海洋に流れ込んでいるという。アメリカの大学の研究者などが、2010年のデータをもとに行った別の推計では、世界全体で最大で1年間におよそ1200万㌧ほどのプラスチックが海に流れ出し、このうち6万㌧が日本から出ているとされる。
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 プラスチックごみ対策としては、使い捨てプラスチック製品の排出削減や、生分解性製品への切り替え等の対策が求められる。日本でも先月31日に、政府が「プラスチック資源循環戦略」で、レジ袋の有料化の小売店への義務づけなどの対策が盛り込まれた。ただ、EUやカナダなどが使い捨てプラスチックの使用禁止措置を打ち出しているのに対して、日本の対策は「甘い」と指摘されている。