HOME12.その他 |世界中の人々が、毎週平均、クレジットカード1枚分相当のマイクロプラスチック(約2000個)を、飲料水や食料を経て体内に摂取。塩、ビールからも。WWFが大学と共同研究(RIEF) |

世界中の人々が、毎週平均、クレジットカード1枚分相当のマイクロプラスチック(約2000個)を、飲料水や食料を経て体内に摂取。塩、ビールからも。WWFが大学と共同研究(RIEF)

2019-06-12 22:59:21

WWF223キャプチャ

 

  環境NGOのWWFの研究報告によると、世界の人々は平均して、毎週クレジットカード1枚分に相当する5gのマイクロプラスチック粒子を、飲料水や食料等を経て体内に摂取している、という。平均すると毎週約2,000ものプラスチック小片を摂取し、重さは1週間で5g、1カ月で21g、1年で250gになるという。

 

 豪ニューカッスル大学(University of Newcastle)への委託研究で明らかになった。世界の学術論文52本の報告を分析した結果、こうした「日常的なプラスチック摂取の実態」が判明した。

 

 プラスチックは、空気中や生き物の体など食物連鎖の中にも入り込み、それが食事や飲み物を通じて人の体内へ取り込まれている。一週間に取り入れられるマイクロプラスチック約2000個(1972個)のうち、最も多いのは飲料水。全体の89%の1769 個。

 

自然界から人間の体内に取り込まれるプラスチック
自然界から人間の体内に取り込まれるプラスチック

 

 次いで、貝類から182個(9%)、ビールは10個(0.5%)、塩11個(0.5%)となっている。摂取量は地域、生活パターン等で異なる。飲料水を分析した地域別データでは、中東のレバノンが飲料水のほとんどに相当する98%の含有率で、500ml中に4.5個のプラスチックファイバーを検出した。

 

 次いで多いのが米国で94.4%の飲料水から検出され、500ml中ではレバノンより多い4.8個を検出した。生活にプラスチック素材が広く使用されていることを示す。3番目はインドで、82.4%の水道水から検出、500ml中では4個。

 

プラスチック摂取の多い飲食料品
プラスチック摂取の多い飲食料品

 

 アフリカやアジアの途上国では相対的に汚染率が低い。これは上水道処理がむしろ遅れていて、自然の水循環に依存しているためとの見方もできそうだ。欧州は対象地域中ではもっとも汚染度が低く、水道水の72.2%、プラスチックファイバー数も1.9個にとどまっている。

 

 別の研究では、平均的な米国人が1年間に食べたり飲んだりする130ミクロン以下のプラスチック粒子は約4万5000個に上ると算出。さらに、ほぼ同量のプラスチック粒子を吸い込んでいるという。

 

主要地域での飲料水中のプラスチック含有率と含有量
主要地域での飲料水中のプラスチック含有率と含有量

 

 今回の研究を委託したWWFのマルコ・ランベルティーニ(Marco Lambertini)事務局長は「プラスチックは海と河川を汚染し海洋動物を殺すだけでなく、われわれ全員の体内にも入り込んでいる」「プラスチックを体内に存在させたくなければ、年間数百万㌧のプラスチックが自然界に漏出することを阻止しなければならない」と述べている。

 

 体内に取り入れられたマイクロプラスチックがどのような健康影響を与えるかについての研究は始まったばかりで、まだ解明されていない。しかし、海洋動物等の場合、食べ物と誤って摂取し、胃に溜まって他の食料を食べられなくなったり、あるいはプラスチックが体に絡まって身動きが取れず命を落とすなどの事例が相次いで観測されている。

 

 別の研究では、マイクロプラスチックが有害物質を体内に取り入れる媒介役をしている可能性も指摘されている。http://rief-jp.org/ct12/90617

 

 WWFは「明白なのは、これは地球規模の問題であり、プラスチック汚染の根本的な原因に対処していかなければいけないということだ。そのためには、海洋プラスチック汚染問題を包括的にカバーする『法的拘束力のある国際的な協定の設立』が必要」と強調している。

 

http://awsassets.panda.org/downloads/plastic_ingestion_press_singles.pdf

https://www.wwf.or.jp/file/20190612_oceana01_1.pdf