ポーランドの発明家、「食べられる食器」を開発。使い捨てプラスチック対策で、使い捨てずに食べてしまえばいい、というわけ。グローバルな廃プラ対策の進展で商機到来(AFP)
2019-06-17 21:31:01
【6月16日 AFP】ポーランドの起業家で発明家でもあるイェジ・ワイソッキー(Jerzy WSysocki)氏は、機械から出てきたばかりのまだ温かい茶色い皿をつかむと、パリパリと食べ始めた。
(写真は、「食べられる食器」を開発したワイソッキー氏)
「ポークチョップは、プラスチック製の皿よりも小麦ふすまでできたこの皿で食べた方がおいしい」。ワイソッキー氏は、ポーランド北東部ザンブルフ(Zambrow)にある自身が経営する「バイオトレム(Biotrem)」の工場でそう言い、満面の笑みを浮かべた。
この食べられる皿はあまり味がしない。シリアルのようだが、段ボールをかじったらこんな味がするかもしれない。だが、ワイソッキー氏は、重要なのはこの食器が生分解性であることだと話す。
環境に配慮する目的で、こうした食器を食べる必要はない。小麦ふすまで作られた製品は、適当な気象条件下でほんの少しの湿気があれば、通常なら1か月、雨の多い時期なら2週間もすれば分解される。
ワイソッキー氏がこの皿を開発したのは15年前だが、バイオトレムは現在、年間約1500万枚を製造している。製造方法について同氏は「原料は小麦ふすまのみで、専用の機械を使い、最適な温度と圧力で圧縮する」と説明した。
EUは、プラスチック製の皿やカトラリー(ナイフやフォーク等)を2021年から禁止する予定で、バイオトレムの生産数も今後飛躍的に伸びる可能性がある。
ワイソッキー氏は現在60代で、父と祖父は製粉業を営んでいた。かなりの場所を取っていた小麦粉の余りを有効利用する方法はないかと考えていた時に、この食器のことを思い付いた。同時に、社会の役に立ちたいという思いにも突き動かされたという。「なぜなら、海を汚すごみの量は驚くほどだからだ」
■EUのプラ禁止が商機に
バイオトレムのマウゴジャタ・テン(Malgorzata Then)最高経営責任者(CEO)は、小麦ふすまの皿は1枚当たり15ユーロセント(約18円)で、さらに輸出の際は20%上乗せされるため、プラスチック製の皿よりも高価なことはもちろん認識していると話す。
だが、「プラスチック皿の価格には、リサイクルや海洋汚染対策にかかる環境コストが含まれていない」と指摘する。
バイオトレムは当初、環境問題に関心の高い人や他社と違うサービスを提供したいと考えるレストランやホテルをターゲットにしていた。だが、「EUの新たな政策によって、環境問題に詳しくない人たちも生分解性製品に関心を持たざるを得ない状況になっている」と同氏は話す。
バイオトレムは現在、欧州やアジア、北米、オーストラリアに製品を供給している。「それほど多くはないが、将来について楽観的に考えられるほどの量だ」と、ワイソッキー氏は話す。
明るい展望は、需要の増加により価格の下落が予想されることが背景にある。また、この技術を応用すれば、トウモロコシや大麦、オーツ麦、キャッサバ、藻類などを原料とした皿の製造も可能になる。
「キャッサバに関しては、最初の試験結果が非常に良好で、すでに興味を持っている顧客もいる」とワイソッキー氏は語った。
バイオトレムでは、持ち帰りやケータリング用の食べられる箱の販売も目指している。開発はすでにかなり進んでいるが、耐水性と耐熱性をより高めることが課題として残されているという。
■「一晩」で始められる技術
ポーランドでプラスチックとの闘いの最前線に立つのは、バイオトレムだけではない。
グダニスク工科大学(Gdansk University of Thechnology)化学部の研究チームは、ジャガイモのでんぷんから作られた生分解性カトラリーを開発した。
ヘレナ・ヤニク(Helena Janik)教授はAFPに対し「生分解性の製品が水生生物へ与える影響を試験したが、このような試験を行っているのはわれわれだけだ。カトラリーは環境に優しいようだ」と話した。
同大学の革新的な技術を企業に売り込んでいるロベルト・バイコ(Robert Bajko)氏は、このカトラリーの製造には複雑な技術や巨額の投資は必要ないと話す。
プラスチック業界の誰もが「一晩で」始められると力説した。