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南太平洋の島国、バヌアツ。プラスチック含有の「使い捨て紙おむつ」の使用禁止実施に向け、英コモンウェルス会議で説明。理解を得る。「代替おむつ」も国民全体で議論(RIEF)

2019-06-25 15:52:57

banuatu2キャプチャ

 

 廃プラスチック対策として、使い捨て紙おむつの使用禁止措置の導入を宣言している太平洋の島嶼国のバヌアツは、このほどロンドンで開いたコモンウェルス会議でも方針を説明、参加国の理解を得た。現在、禁止案に対する国民、NGO等の意見を聞くコンサルテーションを実施中で、「代替おむつ」の対応等を踏まえ、今年末から来年末までの間に実施する考え。廃プラ汚染被害の多い、他の島嶼国にも影響する可能性もある。

 

 南太平洋上の約80の島々で構成するバヌアツ。人口30万にも満たないが、温暖化による海面上昇の危機、海洋の廃プラ汚染による海岸汚染や漁業資源の劣化等、グローバルな環境汚染の最大の被害国のひとつとなっている。

 

 同国は、他の国に懇願するだけでは事態は改善しないとして、これまでも、自ら率先した廃プラ対策を実施してきた。昨年7月には、使い捨てストロー、ポリ袋、発泡スチロールの容器の使用禁止に、世界に先駆けて踏み切った。今年3月には、プラ容器や食品コンテナ、卵容器、プラスチック製造花等も禁じた。使い捨ておむつ対策は第三弾ということになる。http://rief-jp.org/ct12/87261

 

廃プラスチックが打ち寄せられるバヌアツの海岸
廃プラスチックが打ち寄せられるバヌアツの海岸

 

 これまでの廃プラ対策の成果は、明らかにあがっているという。住民はポリ袋の代わりに布製の買い物袋を使い、造花の代わりに自然の花を買うなど、脱プラの生活パターンが広がっている。ただ、おむつの場合、共稼ぎの子を持つ両親や、高齢者の使用という環境対策以外の生活用要素のウエイトが大きい。このため、現在、共働きの夫婦にとっての影響調査を実施中だ。

 

 こうした検討事項を抱えているものの、このほど、ロンドンで開いたコモンウェルズ会議で、バヌアツ外相のMike Masauvakalo氏は「バヌアツは未来を守らねばならない。すでに廃プラスチックは飲料や食物連鎖に入り込んでいる。バヌアツの住民は廃プラ入りの飲食物の消費を続けるわけにはいかない。もはや選択の余地はないのだ」と強く言い切った。

 

 使い捨ておむつには、吸収剤として、プラスチック物質の一種である高吸水性高分子のポリアクリル酸ナトリウムが含まれている。全体の30~60%はプラスチックという。さらに人間の排泄物自体に化学物質等も含まれており、十分な処理をしないで環境中に放出されると有害な影響を及ぼす、とされる。

 

紙おむつは家庭ごみの中心
紙おむつは家庭ごみの中心

 

 一方で、紙おむつはバヌアツの女性たちにとっても、おむつ替えの重労働から解放してくれるメリットがある。それを禁止すると、母親たちの家事労働が再び重くなるリスクがある。簡便な紙おむつは、高齢者の生活にもプラスになっているのは間違いない。紙おむつ問題は生活そのものなのだ。

 

 バヌアツの決断は、コモンウェルス各国で構成するコモンウェルス・ゴミプログラム(CLiP)の調査で、家庭からの廃棄物の4分の3を、食品残渣と使用済紙おむつが占めているとの結果が示されたことも踏まえている。つまり、紙おむつ問題は、廃棄物問題でもあるのだ。

 

 バヌアツ国内ではすでに多くのコミュニティや女性グループがおむつ禁止の政策に対して激論を繰り広げているという。国民全員が議論しているのだ。外相は、「子を持つ親は大変だが、コットンの代用品を探すことになるだろう」と説明している。

 

紙おむつの3-~60%はプラスチック素材
紙おむつの3-~60%はプラスチック素材

 

 廃プラスチックが、世界中の飲料水や食塩、魚介類等に混じっていることは、すでに多くの研究結果で示されている。しかし、だからといって、世界中の多くの国(日本を含めて)は、抜本的なプラスチック使用規制には乗り出していない。目に付く使い捨てストローを禁止する一方で、レジ袋、プラ容器は大半がそのまま使われるケースが多い。ストローと紙おむつでは、比べるまでもなく影響は紙おむつが大きい。だが、多くの国は、紙おむつ対策には真剣に取り組んでいない。

 

 先ごろ開いたG20のエネルギー・環境関係閣僚会合は海洋プラスチックごみの削減へ各国が協調して取り組む初の国際枠組みの創設で合意したが、実施は先だ。バヌアツは、これまでもプラスチックの使用を減らすための実施を優先してきたし、今度は廃棄物問題の最大課題を実施しようとしている。その理由は簡単だ。彼らは、すでに魚が、食べ物が、人間の廃棄物で汚染されていることを直視しているからだ。

 

 コモンウェルス会議の海洋・自然資源担当のNicholas Hardman-Mountford氏は「バヌアツは、鉱山事故の際に、救助隊とともに地下の坑道に入っていくカナリアのような役割を果たしている。同国は多くの土地を持たないので、思い切った措置を取らざるを得ない」等と説明している。バヌアツの行動に対しては、他の島嶼諸国も注目している。

https://www.gov.vu/en/