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国際刑事警察機構と世界税関機構、野生生物の密輸網を世界で一斉摘発。「サンダーボール作戦」展開。1万匹以上の動物保護とともに、約600人逮捕。オンライン密輸増加(RIEF)

2019-07-16 08:20:54

Interpol1キャプチャ

 

  国際刑事警察機構(インターポール、Interpol:ICPO)は世界税関機構(WCO)と連携し、世界109か国で野生生物の密輸網を一斉摘発した。摘発対象は、ライオンや猿などの密輸のほか、希少植物や海洋生物、これらを原材料とした衣料品、医薬品、食品、美容品、工芸品等にも及ぶ。1万匹以上の動物を保護するとともに容疑者582人を逮捕した。

 

 ICPOとWCOの連携行動の名称は「サンダーボール作戦(Operation Thunderball)」。2017、18年に続き3回目。野生生物とその関連品の密輸によって、不正利益を得たり、マネーロンダリングの手段に活用している国際犯罪ネットワークを摘発することを標的としている。

 

押収された象牙
押収された象牙

 

 具体的な摘発事例では、アフリカのナイジェリアで、アジア向けに輸出されるセンザンコウの甲羅が500kg分もまとめて見つかった。ウルグアイでは400種以上の保護種を密輸しようとした3人が逮捕された。

 

 オンラインによる密輸も顕著だ。スペインでは、国際条約で売買が禁じられている野生生物のオンライン取引で21人が逮捕された。イタリアでは、2件のオンライン調査の結果、1850羽の保護鳥類が押収された。

 

 IPCOはネット取引がグローバルな密輸取引の拡大に利用されていると警告している。逮捕者数は今後、各地での摘発報告が集まるにつれ、さらに増えるとみられる。

 

密輸された鳥類を保護
密輸された鳥類を保護

 

 今回の「サンダーボール作戦」の結果、保護された動植物は膨大だ。生きた霊長類23匹、ライオンなどの大型ネコ科動物30頭、鳥類4300羽超、爬虫類約1500匹、カメ約1万匹、象牙440本と象牙加工品545kg、サイの角5本、7700のあらゆる生物の加工品、30kgの野生食肉、2550㎥分の樹木(トラック74台分)、2600の植物種、1万の海洋生物の加工品(サンゴ、タツノオトシゴ、イルカ、サメ等)ーー。

 

 IPCOの事務局長のJürgen Stock氏は「野生生物の密輸取引は、自然環境から生物を強奪するだけではなく、組織犯罪やマネーロンダリング、詐欺等を通して社会全体に害毒を及ぼす。今回の作戦は、こうした不正活動を通じて利益を得ている国境を越えた犯罪ネットワークを摘発することを目的とした」と述べている。

 

「サンダーボール作戦」で押収・保護された動植物
「サンダーボール作戦」で押収・保護された動植物

 

 日本選出のWCO事務局長の御厨邦雄氏は「今回のICPOとのイニシアティブは、野生生物犯罪の重大さに対するグローバルな法執行機関による監視の目を引き続き高めることにつながるだろう。国際的な野生生物密輸ネットワークの摘発には、市民社会の協力も含めた幅広い協力体制が欠かせない」と強調している。

 

 動物好きも、ペット愛好家も、ただ珍しい、ただ可愛い、というだけで生物を愛でるのではなく、野生生物のサステナブルな生育環境を壊していないか、犯罪に利用され、加担していないかを確認する必要がある。密輸された動植物を手にすることは、自らのサステナブルな生活を破綻に導くものであることを肝に銘じる必要がある。

 

https://www.interpol.int/News-and-Events/News/2019/Wildlife-trafficking-organized-crime-hit-hard-by-joint-INTERPOL-WCO-global-enforcement-operation