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昨年中に殺害された土地・環境保護活動家の数、164人。一週間に3人が殺された。最高はフィリピンの30人。採掘、食品、伐採等の企業関連が多い(RIEF)

2019-08-01 17:13:29

 

 昨年1年間で、少なくとも164人の土地・環境保護活動家が殺害されたと、国際NGO「グローバル・ウィットネス(Globak Witness)」が、年次報告で明らかにした。もっとも多くの被害者を出したのはフィリピンで30人が殺害された。ついで、コロンビア、インドとなっている。一週間にほぼ3人が世界のどこかで、採鉱企業や食品企業、伐採業者などによる搾取から、居住地や土地、天然資源などを守ろうとして殺されたことになる。

 

 18年の殺害者数は、過去最多だった2018年の207人から減少した。ただ、GWは、「実際の死者数はもっと多い可能性があり、事件が報告されていなかったり遠隔地で殺害が起きたりしている可能性もある」と説明している。国によっては、警察等が迫害側に回っているケースも少なくない。

 

 国際的な監視活動を行っている同NGOの年次報告書によると、殺人以外でも、世界各地で「数え切れないほど」多くの人々が、暴力や脅迫、あるいは抗議取り締まり関連法の適用や悪用を通じて口を封じられている。

 

 globalwitness1キャプチャ

 

 GWが2012年に報告書を公表するようになって、常に第1位はブラジルだった。それが18年は初めて4位に下がった。ブラジルでは同年、殺人数全体が減少したこともある。反対に今年30人の殺人が発生してトップとなったフィリピンでは、殺人のうち半数の15人が農業関連で土地の収奪に反対するなどの活動をして殺されている。

 

 2位のコロンビアは24人、3位のインドは23人となっている。殺人数が急増したのはグアテマラ。17 年は3人だったのが、18年は5倍強の16人に急増した。同国は人口比ではもっとも危険な国となった。

 

 活動家や先住民等に対する殺人が最も多く発生した地域は中南米。この傾向は12年の調査開始以来、一貫している。中南米では伝統的に人権擁護の活動が根付いており、一市民、一農民が、土地の収奪や環境悪化に対して積極的な反対行動をとる傾向が強い。このため、業を煮やした開発企業等が強引な手段に打って出るという。

 

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 その他の地域では、アフリカは全体で14人と、中南米に比べると少ない。しかしアフリカでは土地をめぐる国家、部族間等の争いが頻繁に起こっている。GWは調査を続けたが、殺人の原因が土地問題や環境問題であることを証明する証拠が十分に得られないことが多く、市民やメディアの問題意識も低いという。欧州ではウクライナで3人の殺人が確認された。

 

 業種別では、土地を掘削する鉱業での殺人がもっとも紛争が多く、43人にのぼった。ついで農業ビジネス(21人)、水利用・ダム(17人)、林業(13人)と続く。殺人数が増加しているのは水利用・ダムの部門。17年は4人だけだったのが、18年は17人に4倍増した。

 

 一度に大量の殺人が起きたのは、インド南部タミルナド(Tamil Nadu)州の銅山事件。同鉱山の廃液等が周辺環境へ有害物質を撒き散らしていることに抗議した地域住民ら13人が殺害された。フィリピン中部のNegros島のサトウキビ農民ら9人が射殺され、生活していたテントが焼き払われるという事件があった。犠牲者には女性や子どもも含まれていた。

 

反対運動を狙う卑劣な目が・・
反対運動を狙う卑劣な目が・・

 

 先住民に関する国連の特別報告者、ビクトリア・タウリコープス(Victoria Tauli-Corpuz)氏は、「土地や環境保護の活動家たちは、そのうちのかなり多くが先住民だが、彼らは自分たちの権利を守ろうとしているのに、テロリストや略奪者、犯罪者だと断じられている。これは世界各地でみられる現象だ」と指摘している。

 

 GWはこうした殺人を誘発した農業開発やインフラ事業等に投融資している金融機関ないしは、事業を推進する企業に投資している投資家も、間接的に、殺人に加担していることになるとして、警鐘を鳴らしている。

https://www.globalwitness.org/en/campaigns/environmental-activists/enemies-state/