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ハワイ・マウナケア山頂に計画された超大型望遠鏡(TMT)建設計画、中断へ。先住民の聖地を無視。平和闘争に州も工事先送り判断(RIEF)

2019-08-05 14:44:40

Hawaii1キャプチャ

 

 日本も参加するハワイ・マウナケア山での超大型望遠鏡(TMT)計画に、ハワイ島の先住民が反対している問題で、建設計画側が工事の約2年間の延期を決めた。建設予定地は先住民にとって神聖な聖地とみなされている。しかし、すでに周辺には12の大型天文台が林立しており、先住民は「いい加減にしてくれ」と、法廷闘争と平和的抗議行動を展開してきた。

 

 (写真は、TMT望遠鏡の完成予想図)

 

 TMT(Thirty Meter Telescope)計画は14億㌦の資金を投じて、同州のBoard of Land and Natural Resources (BLNR)が、2014年に公表した。直径30mの大規模望遠鏡は、スペースシャトルが打ち上げたハッブル宇宙望遠鏡より12倍も鮮明な画像で宇宙を観測できるという。

 

広場に座り込んで反対の意思表示をする人々
広場に座り込んで反対の意思表示をする人々

 

 しかし、建設予定地のマウナケア山(標高約4000m)はハワイ先住民が山全体を聖地として信仰の対象にしている。2015年にハワイ最高裁は、反対者の嘆願を的確に考慮していないとして、いったん、当初の計画を無期限延長とした。さらに16年末にはTMTとハワイ大学のサブリース契約が無効との判断も示された。

 

 その後、BLNRが対策を進め、最新の最高裁判決では、建設許可が出た。このため7月半ばに工事準備を再開する方針を立てたが、反対する住民らは、平和裏に反対運動を展開、工事機材の搬入を阻止した。警察が動員され、老人を含む33人がいったん拘束される事態となった。

 

 住民らの反対運動は、現在、香港やモスクワで起きているような、物理的衝突も辞さない激しいものではなく、歌を歌い、周囲の人に訴える運動。こうした平和的な訴えに、建設推進チームは7月31日までに工事再開の延期をハワイ州当局に申し入れた。

 

 イゲ州知事は7月17日に非常事態を宣言したが、30日に「現地に重機を運ぶ必要がなくなった。工事は急を要していない」と述べ、2021年9月まで約2年間の延期を承認し、事実上、計画遂行を撤回した。

 

 科学の進歩も大事だが、今生きている人々の心を無視して、大義名分だけで推進するのは愚かなこと、という教訓が残った。

https://www.space.com/thirty-meter-telescope-protests-close-observatories.html

https://www.space.com/38336-thirty-meter-telescope-construction-approved-hawaii.html