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カシューナッツの殻から、改良型の「グリーンプラスチック」開発。無色透明で柔らかな素材を実現。フィルム・シート等に応用可能に。東京農工大学兼橋真二助教(RIEF)

2019-08-17 01:13:28

カシューナッツは、食べ出すと止められない

 

 カシューナッツの殻から「グリーンプラスチック」を開発する研究を続けている東京農工大学大学院工学研究院応用化学部門の兼橋真二助教らの研究グループは、無色透明な材料の製造に成功した。従来の方法では、黄色や褐色の色合いだったが、無色透明でかつ柔らかな素材を実現することで、多様な生分解性プラスチックとして応用できる可能性が高まった。

 

 カシューナッツは、アジア、南米、アフリカなど各地で栽培されている。果肉や種子は食用にされるが、殻は食用にはならず、その多くが廃棄処分される。研究グループはこの非可食性の廃棄殻からグリーンプラスチック(バイオベースポリマー)を生成する研究を重ねている。

 

 これまでの研究では、ポリフェノールである天然植物油(カシューオイル)を抽出し、それをエポキシ化し、紫外線照射等によって、室温で成形可能なグリーンプラスチックの生成に成功していた。ただ、エポキシ化の工程で生成される材料は、「黄色~褐色」に着色された状態になる。https://rief-jp.org/ct12/70900?ctid=65

 

 今回、原料のカシューオイルをアリル化して、生成したアリルカシュー(無色透明な液体)とチオール硬化剤等によるチオール・エン反応による光重合で硬化させ、材料を生成した。この方法だと、従来の着色を大幅に抑制した無色透明なやわらかい材料を生み出せるという。

 

 また、カシューオイルを使用した従来の製品ではホルムアルデヒド、重金属触媒、揮発性化合物等が製造に用いられてきた。兼橋助教の開発した材料では、これらの環境負荷の高い化合物は一切使用しない。環境調和型製造プロセスである点も特徴だ。

 

kanehasi2キャプチャ

 

 生成された「グリーンプラスチック」は、耐熱性、耐薬品性、抗菌特性、速乾性、材料成形性に優れ、塗料、樹脂、機能性フィルム、シート、添加剤、反応性希釈剤などの各種分野への展開に期待できる。

 

 兼橋助教は、カシューナッツ殻製のグリーンプラスチックの普及について、「最終的に100%植物由来にすることが目標。最初の段階として、従来の石油由来の製品の何%かをカシューナッツ由来のものを配合していくアプローチが現実的」と述べている。

 

https://shingi.jst.go.jp/list/tuat/2019_tuat.html