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火災で焼失したパリのノートルダム寺院、周辺に鉛汚染。屋根や尖塔に使われた鉛、約400㌧が飛散。緊急に除去作業(RIEF)

2019-08-15 11:50:02

Nortredam

 

 パリで4月に火災で尖塔等が焼失したノートルダム大聖堂に新たな問題が起きた。火災で屋根等に使われていた鉛が溶けて約400㌧分が飛散、周辺を汚染したとみられるためだ。大聖堂の再建の前に、大聖堂の周囲の道路を封鎖して、鉛汚染除去作業が始まった。

 

 鉛中毒は神経や消化器系の障害を引き起こす。すでに保健当局によると、周辺の子ども16人から通常より高い血中濃度の鉛を検出したと報じられている。地元メディアによると、周辺で基準の最大800倍の鉛が検出されていたと指摘。修復作業員らへの影響も懸念されている。

 

 鉛は、寺院の屋根や尖塔に使われていた。火事で飛散したとみられる鉛は、約400㌧とみられる。火災で流れ落ちたほか、粉じんが周囲に飛散したとみられる。

 

 市の保健当局は「鉛は、恒常的に吸わなければ健康被害はない」と表明してきた、だが、環境団体は健康影響を懸念し、7月末に当局の対応が不十分として、被疑者不詳のまま告訴状を捜査当局に提出していた。

 

除去工事のため、防護幕で遮られた寺院(東京新聞より)
除去工事のため、防護幕で遮られた寺院(東京新聞より)

 

 このため13日、地元警察は、寺院西側周辺を中心に、広場や道路を閉鎖、汚染懸念地域約1万㎡を立ち入り禁止にした。閉鎖地域内では、特別除去チームが化学物質を混ぜた高圧放水で地表上の鉛の粉じんを洗い流し、その後、残留鉛を吸着させて除去する作業を実施している。

 

 作業は10日間かけて実施する予定。作業中は、近くの地下鉄の乗車口も一時閉鎖され、寺院を通るバスのルートも変更された。周辺の小学校や託児所7カ所でも、校舎やグラウンドなどの除染作業を実施している。学校は現在、夏休みのため、9月の授業再開までの間、除染作業を続ける予定。

 

 これまでに小学生など162人の健康状態をチェックしたが、うち16人から通常より高い鉛の血中濃度を検出した。うち1人はかなり高いレベルだという。ただ、当局は、子どもたちの鉛の血中濃度レベルの高さの原因が、寺院の火災かどうかは現時点では不明としている。

 

 国立健康医療研究機関(Inserm)の研究責任者の Annie Thébaud-Mony氏は「寺院から流出した約400㌧の鉛の量は、フランス全土で年間に排出される鉛量の4倍に相当する。鉛はアスベストと同様の毒性を持つ。火災時に消火に当たった消防士らは、粉じんを吸収しない装備を身に着けていたと思うが、再建作業に取り組む作業員も同様の保護が必要だ」と指摘している。

 

 マクロン仏大統領は大聖堂を5年間で再建する目標を掲げている。だが、Thébaud-Mony氏は「作業員や周辺への飛散物質による悪影響を考慮するならば、作業は拙速ではなく、慎重に進められねばならない」と警告している。

https://www.theguardian.com/world/2019/aug/13/notre-dame-fire-lead-contamination-clean-up-begins-around-cathedral