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マイクロプラスチック汚染、北極圏でも蓄積。人間空間で廃棄され、粉じんが大気中を長距離飛散か。北極にまで飛ぶものが、人体にはどう吸収されているか。独・スイスの共同研究(RIEF)

2019-08-16 22:25:42

microplaastic1キャプチャ

 

  世界的に懸念が高まっている廃プラスチック汚染が、北極圏にも及んでいることがわかった。大気中に粉じんなどとして拡散したマイクロプラスチックが、北極圏やアルプスなどの高地に雪に混ざって降り積もっていることが、ドイツとスイスの研究所の共同研究で検証された。プラ汚染のない場所は、この地球上にはない、ことが確認された。

 

 調査を行ったのはドイツの「Alfred Wegener Institute(AWI)」とスイスの「WSL Institute for Snow and Avalanche Research SLF」の2機関。研究論文は科学雑誌「Science Advances」に掲載された。

 

 研究チームは2015~17年にかけて、北極圏のデンマーク領グリーンランドとノルウェーの間にあるフラム海峡(Fram Strait)に浮かぶ氷盤5か所でサンプルを採取し、赤外線撮像で分析した。またスイスのアルプス山脈とドイツ北西部ブレーメンでも、それぞれ雪氷を採取し、比較した。

 

北極圏で氷を採取
北極圏で氷を採取

 

 その結果、ドイツブレーメンの農道周辺で採取したサンプルからは、1㍑当たり15万4000個のマイクロプラスチックの粒子を検出した。一方、北極圏の雪からも、個数は10分の1と減るが、それでも同1万4400個を検出した。

 

 検出したプラスチックの種類は地域によってさまざま。北極圏からは、合成ゴムのニトリルゴムやアクリレート、合成ペイントなどの成分が主だったという。研究チームは、人間の居住空間で廃棄され、大気中に舞い上がったプラスチックが気流に乗って広範囲に広がった結果とみている。

 

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 ニトリルゴムは、ガスケットやホースなどの消費財に使用されている日常的に知られた合成物質。塗料の中にも合成プラスチックが含まれており、ビルの壁面塗装や、船舶や自動車、洋上のオイルリグなどの外表面の保全に使われている。

 

 マイクロプラスチックは1mm以下の微細な粒子とされるが、今回、北極圏等で検出された粒子は、11μm(0.011mm)~475μm(0.475mm)で、80%が25μm(0.025mm)以下と、超微粒子が大半だった。長期間の環境中での浮遊や太陽光照射の影響等で、より細かく分解されたとみられる。

 

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 AWIのメラニー・バーグマン(Melanie Bergmann)氏は、「雪中のマイクロプラスチックの大半が大気由来であることは明確。大量のマイクロプラスチックが大気に運ばれていることが確認されれば、次には、私たちはそれを吸い込んでいるのか、いるとすればどうやって、どれだけの量を吸い込んでいるのかという疑問が浮かぶ」と述べている。

 

https://advances.sciencemag.org/content/5/8/eaax1157.full