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南大西洋のユネスコ自然遺跡の英領イナクセシブル島の「ごみベルト」、陸地からの漂着よりも、中国船舶からの投棄増加の可能性。南アフリカ等の研究チームが長期分析論文(RIEF)

2019-10-03 09:13:20

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 南大西洋の真ん中に浮かぶ面積14km2の無人の火山島、英領イナクセシブル島(Inaccessible Island)には、海流の影響で世界中からプラスチック廃棄物が流れ着くことで有名だが、その廃ペットボトルの大半は、中国産で、中国商船の海洋投棄の可能性が高いとする研究論文が公表された。

 

 (写真は、研究チームがイナクセシブル島で回収したペットボトル)

 

 南アフリカ・ケープタウン大学のFitzPatrick Institute of African Ornithology所長、Peter Ryan氏や同研究所のBen J. Dilley氏、カナダの生物学者Robert A. Ronconiらが共同執筆した「Rapid Increase in Asian bottles in the South Atlantic Ocean indicates major debris inputs from ships」と題した研究論文。米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された。

 

大西洋上の南米とアフリカの中間にある
大西洋上の南米とアフリカの中間にある

 

 研究チームは、1984年、2009年、2018年に同島を調査に訪れ、海洋に漂う多数の廃棄物を収集・分析した。アルゼンチンと南アフリカのほぼ中間に位置する同島は、「イナクシブル(近寄り難い)」という名前の通り、切り立つ断崖絶壁に囲まれている。南大西洋環流(South Atlantic Gyre)として知られる海流の広大な渦の中にある。

 

 同島を取り囲む海洋には広大な「ごみベルト」が長年にわたって形成されている。1980年代の調査では、3分の2の廃ボトルは3000km離れた南米から西風に運ばれてきていた。しかし、2018年までにアジアからのボトルが南米からのものを上回った。

 

 現在、「ごみベルト」に滞留しているボトルのうち73%はアジア産が占める。新たに流れ着いたボトルの83%もアジアからという。そのアジア産の廃プラの大半が中国製。廃プラボトルの増加量は年間15%増と、他の廃プラ製品の7%増より倍の伸び率であることがわかった。

 

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 2018年には、沿岸部で2580件のプラボトルと他のプラ容器類を調べ、定期的モニタリング期間中にさらに174のボトルを回収・調査した。沿岸部に漂う廃プラからは、1971年製造のポリエチレン製のカンも回収されたが、大半はいわゆるペットボトルで、その90%は表示の日付から2年以内の漂着物だった。ただ、アジアから同地域までたどり着くには、通常3~5年かかる。

 

 この疑問の解消は、ペットボトルの形状で解き明かされるという。多くのボトルがキャップをきつく締めたままつぶされていた。これは漁船ではなく、遠洋航海の商船が船上のスペースを節約するために習慣的に行われる方法とされる。

 

 

 回収された中国製の廃ボトルには2年どころか、直近の製造品も含まれていた。こうしたことから、研究チームは、航行中の商船から放出された可能性が高いとしている。そうだとすると、船舶の航行や事故による海洋汚染防止を定めた海洋汚染防止条約(マルポール条約)違反となる。

 

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 論文は、大西洋でのアジアの漁船の数は1990年代から大きく変化していない。ただ中国の貨物船・商船の数は非常に増加していることも指摘。ペットボトルは港で漁船から廃棄されたものではなく、商船から船外に投棄されたものと結論付けている。

 

 回収された廃プラには日本からのものも少ないが含まれている。これらも船舶から投棄された可能性もある。また廃漁具では、南米からのものが依然過半数を占めるが、アジアでは台湾の比率が高い。また日本産も2~3%の水準で見つかっている。

 

 大海に漂う「ごみベルト」は、多様な廃棄物から構成されている。漁船団で使用された漁網やロープ、ブイ、浮きなどのほか、商船・貨物船で航海生活で使ったペットボトルや各種の空プラ製品などが混じっている。これらが日射と波・潮の影響で細分化されていく。

 

断崖が続くインクレデブル島
断崖が続くイナクセシブル島

 

 大西洋だけではない。2018年に米科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に掲載された論文によると、「太平洋ごみベルト(GPGP)」は、重量の半分が漁網で構成されているという。

 

 論文を執筆した海洋学者のローラン・ルブルトン(Laurent Lebreton)氏は、「プラスチック製の袋、ストロー、使い捨て包装などの使用をやめれば海を救える、と誰もが話題にしている。それも重要だが、海に出て目にするごみは必ずしもそれだけとは限らない」と語っている。

https://www.pnas.org/content/early/2019/09/24/1909816116.short?rss=1

https://www.researchgate.net/publication/323943462_Evidence_that_the_Great_Pacific_Garbage_Patch_is_rapidly_accumulating_plastic

https://www.pnas.org/content/pnas/suppl/2019/09/24/1909816116.DCSupplemental/pnas.1909816116.sapp.pdf