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昨年秋の台風豪雨の影響。福島の原発被災地区で、雨水による放射線量の減少と他地域への汚染拡大の実態が明るみに。Jヴィレッジでもホットスポット検出。グリーンピースジャパン調査(RIEF)

2020-03-09 16:06:44

GP1キャプチャ

 

 環境NGOグリーンピース・ジャパンは9日、昨年秋の台風による豪雨の影響で、福島原発被災地での放射線量が大雨後に大幅に減少する一方で、雨水が流れ着く先でホットスポットが形成され、再汚染されるなどの事態が起きていると指摘する調査報告書を公表した。大雨は放射能を洗い流すのではなく、他地域に汚染を移動させる影響を及ぼしていることになる。報告書は一度除染した避難指示解除地域でも、定期的な除染、大雨などの後の再除染を速やかに実施することなどを求めている。

 

 公表された報告書は、放射線調査報告書終わらない汚染 福島県浪江町、大熊町、福島市、阿武隈川河川区域および楢葉町における東電原発事故放射線調査。2019年10月16日から11月5日にかけ、飯舘村、浪江町の帰還困難区域と、避難指示が解除された地域、大熊町、阿武隈川河川区域、オリンピックで競技が行われる福島市、聖火リレーの出発地点のJヴィレッジ周辺で放射線量を測定した。

 

調査対象区域
調査対象区域

 

 その結果、浪江町のある民家では、2017年調査で家屋周辺で平均3.3μ㏜/hだったが、19年は2.4μ㏜/hに低下。個別調査地点の果樹園で17年最高5.2μ㏜/hだったのが、19年は検出無し(n/a)に、家屋の周辺の5.1μ㏜/hが、同様に(n.a)に急減していた。他の調査地点でも同様の傾向がみられた。

 

 一方で、同民家の敷地内倉庫の一部では、地表から1m、50cm、10cmの各部分で7μ㏜/h、16μ㏜/h、90μ㏜/hの高濃度の放射能が検出された。屋根からの雨どいを伝ってその下の窪みに溜まった雨水が、放射能を集めてホットスポットを形成したとみられる。同民家は除染済みだが、雨水の影響で、汚染箇所が移動、広がったといえる。

 

放射能量が急減した民家でのデータ
放射能量が急減した民家でのデータ

 

 福島第一原発から北北西約7.5kmにある高瀬川沿いの道路(浪江町樋浦)の避難指示解除区域の土手を調査したところ、川沿いの道路はその97%が、土手斜面は100%が除染の 目安値を超えた。原発から北西11.5kmの浪江町苅宿にある小学校の前の森でも、すべての地点で除染目安値を超え、最大2.3μ㏜/hを記録した。

 

 浪江町の帰還困難区域を走る国道114号線沿いで約26kmにわたって走行サーベイを実施、2511地点を測定したところ、放射線レベル の平均値は毎時0.4μ㏜、最大値は毎時3.7μ㏜を記録した。除染していない森から雨水が流れ出し、その流れの先にホットスポット が形成されたとみられる。ホットポットの最大値は、地表から1m、50cm、10cmでそれぞれ毎時7、11、31μ㏜。雨水の移動経路がそのまま放射能の移動経路と推測された。

 

福島市内でも雨水の影響で変動するホットスポット地点
福島市内でも雨水の影響で変動するホットスポット地点

 

 東京オリンピックの聖火リレーの出発地点となるJヴィレッジでは、地表面付近で最大毎時71μ㏜の非常にリスクの高いホットスポットが見つかった。グリーンピースは環境省に通報、それを受けて、東京電力が2019年12月に局所的な除染を実施したという。

 

 だが、グリーンピースがその後の12月13、14日に再調査を行ったところ、別のところに複数のホットスポットを確認した。環境省と東電の除染作業が、通報を受けた地点だけを除染し、周辺を広範囲に調べていないことが明らかになった。調べると同地点だけでなく、他の地点を含めて、再汚染が広がっていることが判明するのを避けた疑いもある。

 

調査するグリーンピースのスタッフら
調査するグリーンピースのスタッフら

 

 グリーンピース・ジャパン、エネルギー担当の鈴木かずえ氏は、「気象状況により放射能が移動し、放射線が大幅に減少するところがある一方で、新たなホットスポットも形成されている。気象災害が甚大化する昨今、憂慮される。除染に『完了』はない」と指摘している。

 

 兵庫県に避難中の浪江町住民で、今回の調査に協力した菅野みずえ氏は、「世界の人々に福島県の実情を知ってもらいたい。大雨で放射能が山々から流れ出し、除染された地域に流れ込み、私の自宅周辺で見つかった放射能レベルは、これまでにないほど高かった。いったん原発事故が起きるとこのようになってしまう。間もなくオリンピックが開催されようとしているのに、何も問題ないふりをしている。それは『間違っている』と知ってください」と訴えている。

 

 グリーンピースでは、国連人権理事会の特別報告者による訪日調査を求めて、同報告者の受け入れを日本政府に申請している。

https://storage.googleapis.com/planet4-japan-stateless/2020/03/0131090c-jp_fksm2020_web.pdf