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東電福島第一原発事故後の放射性セシウム基準超の山菜、ネットの「メルカリ」「ヤフオク!」等で販売。産地表示は「福島以外」(各紙)

2020-06-01 12:26:35

koshiabura001キャプチャ
 各紙の報道によると、東京電力福島第一原発事故後の食品基準(1kg当たり100ベクレル)を超える放射性セシウムを含む山菜コシアブラが、直売所やインターネットの「メルカリ」や「ヤフオク!」等で売られていたことがわかった。汚染された山菜の販売は食品衛生法違反の疑いがある。東京新聞が食品の汚染状況を調べている木村真三・独協医科大准教授(放射線衛生学)と福島市のNPO法人「ふくしま30年プロジェクト」へ取材して分かった。

 東京新聞によると、木村氏らは4月下旬以降、福島県会津地方や山形、宮城、岩手各県の直売所や道の駅で、コシアブラやコゴミ、ワラビ、原木シイタケなどを購入、ゲルマニウム半導体検出器で8時間測定した。
 検証対象の35件のうち、仙台市内の直売所で購入した「秋田県産」表示のコシアブラから、基準値の2倍を超える1kg当たり210ベクレルを検出した。これ以外では、宮城県産のワラビから32ベクレル、コゴミが34ベクレル、山形県産の原木シイタケが42ベクレルなど14件で基準値以下のセシウムを検出した。他20件は不検出だったという。
 「ふくしま30年プロジェクト」も同時期に、ネットの個人売買サイト「メルカリ」と「ヤフオク!」で購入したコシアブラを測定した。その結果、対象となった15件のうち、表示が山形県産の3件と宮城県産の1件で、基準値を超える109〜163ベクレルを検出したとしている。

 

メルカリの「コシアブラ」販売サイト(対象は今回の調査とは別)
メルカリの「コシアブラ」販売サイト(対象は今回の調査とは別)
 インターネットの両サイトには飲食物も出品できる。だが、賞味期限切れや要冷蔵の食品、安全や衛生面で問題のある者の出品は禁止されている。放射線汚染の山菜の販売は食品衛生法違反になる。
 コシアブラは山菜の中でもセシウムに汚染されやすいことが知られている。このため福島県内のほとんどの市町村と宮城県の7市町では出荷を規制している。ただ、山形県は北部の最上町だけで、秋田県では規制されていない。今回の検証対象の産地表示が正しければ、規制されていない地域のコシアブラが基準値を超えて汚染されていたことになる。
ヤフオク!の「コシアブラ」販売サイト(今回の検査対象とは別)
ヤフオク!の「コシアブラ」販売サイト(今回の検査対象とは別)

 

 基準値超えのコシアブラが売られていたことがわかった仙台市生活衛生課の佐藤晴彦係長は「売っていた事業所や出荷量などを調査中。採取地を特定できていない。店頭で売る食品は、年200件前後を検査している」と話した。林野庁の佐藤睦(まこと)・特用林産物安全推進指導官は「自治体が事実関係を調査中。結果により対応を考えたい」と答えた。
 同紙によると、5月19日の衆院復興等区別委員会では、福島県選出の根本匠元復興相(自民)が質問に立ち、現在の食品基準が厳し過ぎるとして「(復興地域の)一次産業は大きな打撃を受けている。政策判断の基本は科学がベースにあるべきだ」として基準改定を求めた。これに対して同じく福島選出の菅家一郎復興副大臣は「被災地や関係者の意見も聞きながら議論したい」と答え、地元メディア等では「基準値検証へ」との報道につながっているという。
 今回、検査を行った木村氏は「政府が基準緩和に向かえば、国民の被爆リスクは高まる。直売所やネット上で売る人の被爆への意識が風化したから基準値超えの品が出た。出荷する人に責任を持たせ、それを行政が監視するダブルチェックが必要だ。風評被害を恐れるあまり、真剣に調べない自治体も、実害が続いていることを認識するべきだ」とコメントしている。