HOME |日立製作所、英国での原発建設計画からの撤退を発表。新型コロナなどで投資環境悪化を理由に。英国政府による日立つなぎ止め策よりも、原発の将来のコスト高を懸念(RIEF) |

日立製作所、英国での原発建設計画からの撤退を発表。新型コロナなどで投資環境悪化を理由に。英国政府による日立つなぎ止め策よりも、原発の将来のコスト高を懸念(RIEF)

2020-09-16 20:50:02

Wylfa001キャプチャ

 日立製作所は16日、昨年1月に凍結した英国中西部のウィルヴァ(Wylfa)での原発建設計画事業からの撤退を決めたと公表した。新型コロナウイルス感染拡大の影響などで投資環境が厳しさを増していることなどを理由にあげている。8月には、英政府当局が日立の負担を軽減する提案をしたとの情報も流れたが、日立側は原発事業の将来のコスト高を懸念して断念したとみられる。

 (写真は、現在廃炉作業中のWylfaの1、2号機)

 日立が関与してきた英原発計画は、2012年に買収した英子会社 Horizon Nuclear Powerが進めてきた。英中西部のアングルシー島のウィルヴァの旧原発廃炉隣接地に新たに建設する計画。原子炉は、日立製の出力130万kW級改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を2基設置するとしていた。

同プロジェクトの総事業費は当初、200億ポンド(約3兆900億円)。資金プランでは、英国政府が2兆円規模の融資枠を設け、残りの1兆円分は、日英政府・企業連合の3社が3000億円ずつ出資する案が検討されていた。ところが、増大する総事業費をめぐって、英政府からの追加拠出交渉等が進捗せず、日立は昨年1月に撤退を決めた。http://rief-jp.org/ct5/86326

 

日立は撤退に伴い、事業を中国企業に売却するとの観測も出た。英政府および地元では事業の継続を求めており、売却先の有力候補として中国国有企業の中国広核集団(China General Nuclea: CGN)の名もあがっていた。CGNはすでにイングランド西部サマセットのヒンクリーポイントC原発(HPC)建設で、仏EDFと連携しているほか、複数の英原発計画にかかわっている。http://rief-jp.org/ct9/104159

 

 しかし、その後の米中対立の激化を受けて、トランプ政権が中国への売却阻止を英側に働きかけるなどの動きも起きたとされ、CGNへの売却交渉は音沙汰がなくなった。英政府は原発事業者の資金調達支援のため、昨年後半、新たな「規制資産ベース」(RAB:Regulated Asset Base)モデルを公表。CO2排出量ゼロが見込める原発について、政府が設置する管理機関が「規制資産」として建設段階からコスト計上を認める方針を打ち出した。https://rief-jp.org/ct13/105702

 建設コストを圧縮できることから、「日立つなぎ止め用」との指摘もあった。しかし今回、日立はRAB方式への評価には触れず、「新型コロナウイルス感染拡大の影響などにより投資環境が厳しさを増していることも考慮」を決断の理由としている。そのうえで、「今後、英政府や関係機関とともに、建設予定地の扱いやABWRライセンスを所有する日立の協力などについて調整していく」としている。

 すでに日立は、ホライズンプロジェクトの凍結に伴い、2019年3月期連結決算で減損損失等2946億円を計上している。このため、今回のプロジェクト事業運営撤退に伴う業績への影響は軽微、と説明している。

https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2020/09/0916.html