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東電柏崎原発、昨年9月の東電社員によるIDカード不正使用での中央制御室入室事件、2カ所の関門で疑問を持たれながら通過。テロ対策機能せず。規制庁の規制委報告も3カ月以上遅れ(各紙)

2021-02-10 02:05:59

kashiwazaki001キャプチャ

 

   各紙の報道によると、新潟県の東京電力柏崎刈羽原子力発電所で昨年9月に、東電社員が他人のIDカードを無断使用して中央制御室に入った問題で、同社員の不正入室の際に、複数回のエラーが出たにもかかわらず、警備担当者が疑念を持ちながら入室を許可していたことがわかった。中央制御室は原発を制御する中核の部屋で、テロ対策が全く機能していないことを露呈した。

 

 (写真は、新潟県刈羽の柏崎刈羽原子力発電所)

 

 当時、柏崎刈羽原発では再稼働に向けた原子力委員会の審査が行われており、東電は不正入室が発生した9月20日の翌日に、規制委の事務局である原子力規制庁に報告した。だが、規制庁は幹部にまで情報をあげたが、軽微な事案として委員長らには四半期ごとの定期報告で伝えればよいとの判断で、報告を遅らせていたことも判明した。同事態は今年1月に報道で発覚した。更田豊志委員長らは報道されるまで不正入室を知らなかったという。

 

 原発入室時の東電の杜撰なチェック体制に加えて、規制庁の原発情報の取り扱いの杜撰さも露呈するという二重のミスが重なった形だ。東電福島第一原発の事故後、間もなく10年が経過するが、事故を起こした電力会社と、それを適正指導してきたはずの役所が、相変わらずの杜撰な管理体制であることの危うさを、国民はもっと真剣に考える必要がある。

 

柏崎原発を審査する原子力規制委員会の様子
柏崎刈羽原発の保安規定を議論する原子力規制委員会、2020年9月=朝日新聞より)

 

 朝日新聞等は、規制庁が説明した経緯を報道している。それによると、昨年9月20日に、中央制御室に勤める東電社員が、更衣室で自分のIDを見つけられなかった。そこで、無施錠だった同僚のロッカーからIDカードを持ち出して、その人物になりすました。2カ所ある認証手続きも“無事”に通過し、中央制御室に入室し、勤務したという。

 

 まず、出入り口の1カ所目では、下請け会社の警備員2人がIDカードと顔写真の違いに疑問を持ち、複数回本人と見比べたり、名前の確認等を行ったというが、結果的に通過を認めている。2カ所目では、IDカードに登録された本人確認の情報と一致しないことを示す警報が出た。しかし、警備担当社員は、モニター越しに顔写真と本人を見比べただけで入室を認めたうえ、カードの認証情報を不正入室した社員のものに独断で変更した。

 

 その後、不正入室した社員は、使ったIDカードを元の持ち主のロッカーに戻した。だが、認証情報が変更されてしまっていたため本来のカードの持ち主が翌日、入室出来ない事態に陥った。不審に思って調べた結果、IDカードの不正使用が発覚したという。不正にIDカードを使って入室した人物がテロリストだったとしたら、と恐怖を覚える人は少なくないはずだ。

 

 報告を受けた東電は、核物質防護規定に反するとして、翌21日に規制委の規制庁に報告したが、前述のように、規制委員会に伝えられるのは今年1月に報道で発覚した後になってしまった。規制委はこの日の非公開の臨時会で、不正入室を4段階のうち下から2番目の深刻さとする暫定評価を了承、東電だけでは改善できないとして、追加の検査を実施し、原因分析の深掘りや再発防止策が十分かを確認するとしている。

 

 更田委員長ら規制委の5人の委員は、不正入室の報告があった2日後の9月23日に、不正入室を知らないまま、東電の「適格性」が担保されたと認めていた。規制庁の担当者は「情報を隠したわけではないが、今考えれば判断が甘かった」と述べた。「今考えれば甘かった」のではなく、本人確認という基本的情報の確認が無視されたたことへの重要性認識が、そもそもない「甘い体制」と「甘い認識」ということだろう。

 

 また朝日の報道によると、1月23日に報道を受けて東電が不正入室を公表した後も、規制委は「核セキュリティーに関わる」と強調し、透明性や情報公開を重視する姿勢を示さなかったという。更田委員長は1月27日の会見で、「不正入室を把握したのは1月19日だった」と述べ、「すぐに聞かせてもらった方がよかった」との感想を語ったが、実際の東電から規制庁への報告が昨年9月21日だったことは明かさず、規制庁の情報伝達の不備を隠す形となった。

 

 地元の柏崎市の桜井雅浩市長は1月28日、規制委と規制庁あてに「適格性」の判断や経緯の説明などを求める要望書を送った。規制委は、追加の検査で「適格性」の審査の前提が揺らぐような問題が東電になかったか調べる。規制委内での情報共有のあり方についても議論していく方針だ。

https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20210208002174.html

https://www.47news.jp/national/genpatsu/5813019.html