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汚染水めぐる首相の「港湾内海水は完全ブロック」発言に批判の声 一日4割強が海洋流出の推計も(FGW)

2013-09-09 01:10:57

fukushimafence0bc12f60
fukushimafence0bc12f60 安倍首相が国際オリンピック委員会(IOC)総会で、東京電力福島第1原発事故の汚染水漏れについて、「状況はコントロールされている」「汚染水の影響は原発の港湾内で完全にブロックされている」と説明したことが地元福島や研究者の間で波紋を呼んでいる。

 安倍発言は、これまでの政府の説明や、研究者の観察等と、明確な乖離があるためだ。首相は「汚染水の影響は福島第1原発の港湾内0・3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」と断言した。だが、政府はこれまで、1日300トンの汚染水が海に染み出していると試算、報道関係者にも説明してきた。

また地上タンクからの漏えいでは、排水溝を通じて外洋(港湾外)に流れ出た可能性が高いこともすでに指摘されている。にもかかわらず、首相が「完全ブロック」説を、国際舞台で自信たっぷりに発言してしまった。福島の漁業関係者や識者らからも、現場の実態とかけ離れた発言に、「あきれた」「違和感がある」「だれが首相に間違った情報をインプットしたのか」などと、批判や疑問の声が上がっている。

東京電力福島第1原発の港湾と外洋との間は、フェンスで魚が出ないように仕切られているが、海水を遮断しているわけではない。港湾内の海水と外洋の海水の循環については、港湾内の放射性セシウムの濃度を調べている東京海洋大の神田穣太教授の推定では、港湾内の海水の44%が1日で湾外の海水と入れ替わるとみている。同教授の推定の根拠は、東電が11年4月に発表したデータに基づく。

神田教授は今年3月の時点で、港湾内の放射性セシウムの濃度が低下しないことから、「現在も地下水や配管を通じて汚染水の流出が続いている可能性がある」と指摘していた。しかし、東電は「11年6月以降、大規模な汚染水の流出はない」として突っぱねていた。東電は気づいていて「ウソ」をついたのか、あるいは点検する能力がなく、思い込んでいただけだったのか。

 神田教授によると、港湾内の放射性セシウム137の濃度は、11年6月~12年3月にかけて下がったが、12年4月以降は下落傾向が鈍くなった。同教授の試算は港湾内の海水の44%が1日で湾外と入れ替わると推定しており、仮に安倍首相が言うように「完全にブロックされている」とすると、港湾内の放射性物質濃度は薄まらず、もっとレベルが上がることになる。

 

参考情報 http://www.47news.jp/47topics/e/239528.php