HOME13 原発 |福島原発事故の子どもへの影響 甲状腺がんや疑い「全国平均より高率」 地域によって20~50倍。岡山大研究チームが分析(各紙) |

福島原発事故の子どもへの影響 甲状腺がんや疑い「全国平均より高率」 地域によって20~50倍。岡山大研究チームが分析(各紙)

2015-10-09 13:11:58

tudatoshihideキャプチャ

各紙の報道によると、岡山大の津田敏秀教授(環境疫学)らの研究チームは、東京電力福島第一原発事故後、拡散した放射性物質の影響で、福島県内の子供たちの甲状腺がんの発生率が全国平均より20-50倍の高い頻度となっている、とする論文をまとめた。

 

 津田教授らのチームは、事故後、福島県が県民を対象にした検査を独自に分析、その結果、ほぼ同年齢の日本全国での1年間あたりの発症率と比較すると、福島市と郡山市の間で約50倍、福島原発周辺地域で約30倍、少ない地域でも20倍となった。2013年調査のいわき市でも約40倍で、潜伏期間を考慮すると発症率がより高いとみられるケースもあった、としている。

 

 福島県は原発事後、2011年10月から、事故発生当時18歳以下だった県民全員を対象に、首の甲状腺にしこりなどがないかを調べる検査を継続して実施している。県の検討委員会は8月31日時点で、事故当時18歳未満だった計104人が甲状腺がんだったとしているが、「現時点では原発事故の影響とは考えにくい」との判断をとっている。その理由としてスクリーニング検査による精度の向上や、治療の必要がないのに陽性と診断する「過剰診断」を挙げている。

 

 これに対して津田教授のチームは、14年12月末までに県が集計した結果を元に、県内を9つの地域に分けて発生率を出し、国立がん研究センターのデータによる同年代の全国平均推計発生率「100万人に2,3人」と比較した。その結果、甲状腺がん発生率の有意な上昇を見出した。

Tsudahidetoshi2キャプチャ

 津田教授らは、この分析結果を国際環境疫学会が発行する医学雑誌「Epidemiology」(インターネット版)で発表するともに、8日、日本外国特派員協会(東京都千代田区)で記者会見して公表した。

 

 県の検査結果の評価を巡っては県の専門家部会でも、当初の予想に反して多く見つかっている状況が議論された。「事故前の推計の数十倍」と認め、数年内に発症するはずのがんを先取りして見つける「スクリーニング効果だけでは説明できない」との意見も出た。ただ、検討委員会としては、スクリーニング効果の精度の問題や、検査の必要のない人まで受診し、過剰にがんが見つかる過剰診断などが原因と説明している。

 

 また1986年に旧ソ連(現・ウクライナ)で起きたチェルノブイリ原発事故では、14歳以下の甲状腺がん患者の発生が増えたのは事故から5年目以降だったことから、県は、福島事故の影響が顕在化するのは早すぎるとの立場をとっている。

 

 これに対して、津田教授は会見で「チェルノブイリ事故では3年以内にもがんは多発した。スクリーニング効果や過剰診断の影響はせいぜい数倍で、今回の結果とは一桁違う。放射線の影響以外考えられない」と指摘。「福島に住み続ける人々ほど、不要な被ばくを避けるためにも、正しい情報を与えられなければならない」と訴えている。

http://journals.lww.com/epidem/Abstract/publishahead/Thyroid_Cancer_Detection_by_Ultrasound_Among.99115.aspx#