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米ニューヨーク近郊の原発からトリチウム漏洩。操業40年超過の老朽原発。同州知事「健康・安全面への影響は低いが、原因調査を指示」と厳命(RIEF)

2016-02-08 14:17:55

NYindianpointキャプチャ

 米国ニューヨーク市の北部約40kmに位置するインディアン・ポイント原子力発電所から、放射性物質のトリチウムが地下水に漏洩したことがわかった。原子力規制委員会(NRC)は漏洩量は少なく、周辺住民への健康影響は低い、としている。

  インディアンポイント原発(Indian Point Energy Center=IPEC)は3基の原発からなる。うち1基(Unit1)は1962年の操業で、74年に緊急コア冷却システムが規制に合致しないことから停止され、内部の使用済み核燃料等も除去された状態。他の2基(Unit2,3)はそれぞれ1974、6年に稼動、すでに40年以上を経過しているが延長されている。

 

 ニューヨーク州の発表によると、トリチウムは原発周辺の3つのモニタリング用の井戸から検出された。ただ、検出値は低く、上水道システムからの離れている地点のため、拡散の懸念は低い、としている。クオモ州知事は、「今回の漏洩で、原発周辺地域の住民への健康影響の懸念はない」と指摘しながらも、トリチウム漏洩の事実を重視、電力会社のEntergyや州の関係部局に調査を指示した。

 

 トリチウムは水素の同位体で、放射線のエネルギーは小さい。ただ水に混ざるとフィルター等で除去することは困難。東京電力福島第一原発の汚染水処理でも、トリチウムの除去はできていない。

 

 電力会社のEntergyはトリチウム検出の事実を認めたうえで「トリチウム濃度はNRCが定めた基準よりもはるかに低いレベルで、住民への健康被害や安全面での影響の可能性はない。ただ、低濃度だがトリチウムを検出したので自主的に当局に通報した」と説明している。

 

 Entergyが保有する他の原発でもこれまで同様のトリチウム漏洩問題が起きている。バーモント州のVermont Yankeeでは2010年に、ニューヨーク州のFItzPatrick Plantでは2014年に漏洩が見つかっている。Entergyは全米10箇所に保有している。VermontやFitzPatrick などは、石油・ガスの価格下落によって競争力を喪失し、停止仮定し予定になっているという。また多くの原発が40年の運転期間に近づいたり、超過したりしている。

 

 今回のトリチウム漏洩は健康被害を引き起こす事態ではないにしても、40年の運転期間を超過した原発の場合、原子炉自体は操業可能でも、周辺施設の劣化が進んでいることを示した事例といえる。また他のエネルギー発電との競争にさらされ、追加的安全投資や維持管理面での課題がなかったか、といった点も論点になりそうだ。

 

 「原発の経済性」は米国においても、低下していることを示唆する出来事といえる。

 

https://www.governor.ny.gov/news/statement-governor-andrew-m-cuomo-regarding-indian-point-nuclear-facility

http://www.safesecurevital.com/entergy-statement-on-comprehensive-groundwater-monitoring-program-and-elevated-tritium-at-indian-point/