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「原発事故で失職・精神疾患に」 自主避難で東電に初の賠償命令

2016-02-19 14:02:34

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 各紙の報道によると、東京電力福島第一原発事故によって、福島県からの自主避難を余儀なくされた避難者が東電に対して合計約1億8000万円の損害賠償を求めた訴訟で、京都地裁(三木昌之裁判長)は18日、原告の主張を認め、東電に対して被災者へ合計約3000万円を支払うよう命じた。自主避難者への賠償を認めたのは初めて。(判決の意義を語る原告代理人の弁護士、京都市中京区・京都地裁)

 

 

 原発事故での自主避難者は全国に及んでいるほか、海外に避難した人も少なくない。いずれもこれまでは自費で生活等をまかなってきた。京都への他の自主避難者らは「勝手に避難したと周囲から言われてきた自主避難者にとって、後押しになる」と、判決を評価している。

 

 訴えていたのは、原発事故後に京都市内に自主避難した40歳代の夫婦と子ども。原告の夫は会社を経営していたが、自主避難を余儀なくされたことで不眠症やうつ病になり、2011年5月ごろ、就労不能状態になった。

 

 判決では「夫が発症した不眠症とうつ病は原発事故が主な原因の一つ」と認定した。また夫婦がそれぞれ求めていた就労不能による損害についても事故との因果関係を認めた。そして、夫婦の休業に伴う損害計約2100万円のほか、自主避難に伴う費用などを賠償すべきだとした。

 

 東電側は訴訟提起前の原子力損害賠償紛争解決センターの裁判外紛争解決手続き(ADR)の和解金として1100万円を提示していたが、その3倍近い額を認めたことになる。判決後に京都市で記者会見した原告代理人の井戸謙一弁護士は「賠償額に納得できない自主避難者も、諦める必要はない。裁判で堂々と主張するための先鞭(せんべん)になる」と語った。

 

  慰謝料の額は「住み慣れた福島県から地縁のない土地への転居を余儀なくされ、安定した生活が失われた」として、夫は100万円、妻は70万円と判断した。判決では、自主避難を続ける合理性があった時期は2012年8月末までとし、以降については退けた。

 

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  訴訟に対して東電側は自主避難者への賠償は国の指針の範囲に限られると主張してきた。この点について判決は「指針の対象外でも個別具体的な被害の事情に応じて損害を認めることはあり得る」として退けた。

 

 東福島県によると、昨年10月末時点で、避難区域外から県内外への自主避難者は推計で約7000世帯、約1万8000人。京都府内の避難者数は今年1月末時点で697人で、自主避難者が多くを占める。

 

 京都地裁では今回の家族の裁判とは別に、自主避難者ら58世帯175人が東電と国に損害賠償を求めた集団訴訟が係争中。

 

 東京電力は「判決内容を精査し引き続き真摯(しんし)に対応していく」とコメントしている。

 

<原発事故の賠償>

 東京電力福島第一原発事故の被害者への賠償は、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が損害の項目や範囲ごとに指針を定めている。賠償請求には東電との直接交渉のほか、原子力損害賠償紛争解決センターへの裁判外紛争解決手続き(ADR)の申し立てや裁判がある。ADRは訴訟より簡易な手続きで、速やかな解決を促すのが狙い。仲介委員が被害者と東電の意見を聞き調査を進め、和解案を提示。双方が受け入れれば和解が成立する。

http://kyoto-np.co.jp/top/article/20160218000218

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201602/CK2016021902000128.html