HOME13 原発 |東電福島原発事故時 東電は1号機の炉心露出予測を政府に報告せず。避難指示の遅れにつながった可能性。田中原子力規制委員長「報告すべきだった」と指摘。(各紙) |

東電福島原発事故時 東電は1号機の炉心露出予測を政府に報告せず。避難指示の遅れにつながった可能性。田中原子力規制委員長「報告すべきだった」と指摘。(各紙)

2016-04-20 13:23:15

fukushimahiroseキャプチャ

 

 東京電力福島第一原発事故が起きた2011年3月11日の地震発生後約二時間半後に、東電は1号機の炉心露出を予測していたのに、政府や福島県に報告していなかった問題が、19日の衆院環境委員会で取り上げられた。

 

 東電が事故当日の午後5時15分ごろ、「約1時間後に1号機の炉心が露出」と予測していたことは、政府事故調査委員会の中間報告(2011年12月)で明らかになっている。

 

 しかし、原子力災害対策特別措置法(原災法)の報告義務がある予測結果を東電が伝えた記録が、経済産業省原子力安全・保安院(廃止)を引き継いだ原子力規制庁や福島県にないことが判明している。

 

 原災法では、原発事業者は核燃料の冷却ができなくなるといった異常の発生や、その後の応急対応の内容を政府などに連絡しなければならない事を規定している。

 

 田中俊一原子力規制委員会委員長は、民進党の菅直人元首相の質問に対して、「技術的にみれば当然報告するべき事象だった」と述べ、東電に原災法に基づく報告義務があったとの認識を示した。

 

 一方、東電の広瀬直己社長は「非常用炉心冷却装置が注水不能になった」ことは報告したが、「メルトダウンを予測していたこと」の報告がされなかったことに関しては、菅氏の指摘を認めた。

 

 しかし広瀬社長は、なぜ、炉心冷却装置への注水不能の報告はして、自らが予測した炉心露出の可能性を伝えなかったのか、という点では、明確な説明をしなかった。

 

 事故当時、政府は、東電が予測をした4時間後になって、2号機の水位低下の情報をきっかけに、ようやく午後9時23分、原発の半径3kmに避難指示を出した。当時首相だった菅氏は、東電の予測結果があれば、より広い範囲の住民避難を早く決められた可能性を指摘している。

 

 1号機予測結果の未報告は、政府が避難指示を出すタイミングに影響した可能性がある。1号機はその後の政府や東電の解析によると、政府が避難指示を出す3時間前の午後6時ごろには予測通りに実際に炉心が露出し、同7時ごろに炉心損傷が始まっている。

 

  仮に東電が原災法に基づいた報告をしておれば、その後の住民の健康被害等への影響が変わっていた可能性がある。東電の事故防止責任とは別に、事故後の対応不備の責任問題が改めて浮き彫りになった。

 

 菅氏は、当時、2基の原発がメルトダウンの危機に陥っていて現場が混乱していたことを踏まえて、今回の指摘は、「重大情報が首相官邸にも(福島県にも)伝えられなかったことを批判しているのではない」と一応の理解を示した。

 

 しかし、そのうえで、地域住民の避難計画を策定する際の最も重要な情報が官邸に伝わらず、そのことが5年経って初めて明らかになるなど、福島原発事故の徹底的な検証がいまだに十分ではないことを指摘し、政府に対応を求めた。

 

 また、余震の続く熊本地震を受けて川内原発の扱いについても質問した。菅氏は、福島原発事故後、自身が総理大臣として巨大地震によって激甚な事故を起こす可能性があることを理由として、中部電力の浜岡原発の稼働を止めたことを示し、稼働中の川内原発(鹿児島)を停止するつもりはないかと、丸川環境相に質問した。

 

 丸川環境相は、原子力規制委員会が必要に応じて原発の稼働停止を勧告する権限を持っていることを理由に、稼働の停止の判断はしないと答弁した。