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原子力規制委員会 運転40年超過の関電高浜原発1、2号機の稼動延長を認可。耐震性チェックの実証実験先送り。認可期限に間に合うよう、関電に“便宜”(各紙)

2016-06-21 15:19:15

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  原子力規制委員会は20日、稼働から40年を超えた関西電力高浜原子力発電所1、2号機(福井県)の運転期間を20年延長することを認めた。劣化しつつある一部の配管や電気ケーブルの補強や交換が条件。「例外」である延長が、恒常化する可能性がある。

 

 運転延長の条件である古いケーブルの交換などの安全対策工事に3年以上かかる見通しで、実際の再稼働に踏み切れるのは早くても2019年秋以降になるという。今回の延長措置で、1号機は2034年11月、2号機は35年11月まで運転できることになる。

 

 規制委は、2機の原発とも原子炉格納容器上部の放射線を遮る能力が低いことから、安全対策のため、遮蔽用のドームを設置するほか、ケーブルに防火シートを巻き、事故時の対策拠点を新設するなどすれば、新基準に適合すると判断している。

 

  原発の運転期間を原則40年とするルールは、東京電力福島第一原発事故後に定めた原子炉等規制法の改正で導入した。老朽原発による事故を減らすことが目的だ。ただ、規制委が認めれば40年を超えて、例外的に運転することができる仕組みとなっている。関電は昨年4月に、規制委に延長を申請していた。

 

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 高浜1、2号機の場合、経過措置で猶予された7月7日までに延長の条件となる許認可を受ける必要があったが、規制委は両機の審査を最優先し、今年4月に新規性基準に基づく許可を出した。さらに原発の耐震性を確認する必要があるが、この点では重要設備での実際の耐震試験を期限までに実施しなくてもいいという形で先送りし、今月10日に工事計画を認可したいという。

 

  今回の措置は、運転延長が例外的扱いのはずであるにもかかわらず、延長を前提とした審査手続きだったといえる。規制委設置の趣旨からすると、政府や事業者にせっつかれても、ルールを厳守して、安全優先の姿勢を貫くべきだったが、福島事故の「風化」を象徴するように、ルールの変更・弾力化をしてまでも、老朽原発の延長を最優先したことになる。

 

 老朽原発を廃炉にすることは大事故の危険を減らす。福島事故で炉心溶融した1~3号機はいずれも東電の全原発で最も古い原発だった。そのため、事故時に炉心を冷やす装置が旧式だった1号機はほとんど冷却できないという事態に陥った。今回の高浜の2機も、耐震性の不安や設備劣化のリスクを抱えながら、見切り発車の形で延長されるともいえる。

 

  認可後に記者会見した田中俊一委員長は老朽原発の安全性について「20年間は大丈夫だろうが、途中で検査していかないといけない」と述べ、再稼働後も運転状況を注視していく姿勢を、一応は示した。

 

  40年廃炉のルールは、出力が80万kW以下の小規模な原発では、延長による売電収入の確保よりも、新基準に対応する改修費のほうが大きくなる。このため、採算が合わないとして、すでに関電の美浜1、2号機(福井県美浜町)など6基の廃炉が決まっている。

 

 しかし、出力が80万kWを超えるものは、改修後も採算が合う場合が多い。したがって、大型の原発のほとんどについては、40年ルールは意味がなくなる公算が高い。関電は、今年11月に運転40年となる美浜3号機の延長も規制委に申請している。

 

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201606/CK2016062102000127.html