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福島第一原発事故での避難訴訟、東電に11億円の賠償命令「故郷で生きる利益侵害」を認める(各紙)

2018-02-07 18:02:59

fukushimasoshou1キャプチャ

 

 各紙の報道によると、東京電力福島第一原発事故で、避難生活を余儀なくされた福島県南相馬市小高区の元住民や遺族ら計321人が、東電に対して「ふるさと喪失慰謝料」など総額約110億円の賠償を求めた訴訟で、東京地裁(水野有子裁判長)は7日、請求の一部を認め、東電に約11億円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 

写真は、判決を聞くため、裁判所に向かう原告と弁護団)

 原告はほとんどが原発から20km圏内に住んでいた同区の元住民。原発事故直後に避難指示が出され、2016年7月の解除まで強制避難させられた。

   提訴は2014年12月。親しんだ故郷での暮らしを奪われた損害として1人当たり1000万円の「ふるさと喪失慰謝料」の支払いを求めるとともに、東電から支払われる避難生活の慰謝料(月10万円)を月18万円増額するよう求めていた。

 

  水野有子裁判長は「住民は生活基盤で安定的に生活する権利である『小高に生きる利益』を侵害された」と認めた。一連の集団訴訟で、認め得られた賠償額としては最多になった。

 

 原発事故を巡る手段訴訟は全国で約30が提起されているが、今回は4件目の判決となった。訴訟は、昨年の前橋、千葉、福島の各地裁の訴訟と異なり、東電や国の過失責任は問わず、賠償の算定額のみを東電と争った。

 

 原告側は避難生活に伴う損害のほか、「小高に生きることを喪失した」ことによる損害も主張。東電側は、国の賠償基準である「中間指針」に基づき、1人当たり850万円の賠償は認めたが、それ以上の賠償は否定し、原告が訴える「小高の消失という事態は生じていない」と反論していた。

 

 判決は、「原告らは避難を強制されない利益の侵害と『小高に生きる利益』の侵害を分けて主張しているが、裁判所の考え方も本質を異にしない」と認定した。「生活基盤への帰還が可能になっても、基盤が顕著に変わっていれば、人格に対する深刻な侵害だ」として、東電が提示した1人当たり850万円の賠償に上乗せし、1人当たり330万円の賠償を命じた。

 

 判決を受け、東電は「内容を精査して対応を検討してまいります」とコメントした。

 

https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20180207003723.html