HOME13 原発 |国連人権理事会の特別報告者、東電福島第一原発事故現場で、移民労働者、ホームレス等が動員され、放射性物質被爆リスクと、下請け企業からの搾取リスクに晒されていることを憂慮する声明(RIEF) |

国連人権理事会の特別報告者、東電福島第一原発事故現場で、移民労働者、ホームレス等が動員され、放射性物質被爆リスクと、下請け企業からの搾取リスクに晒されていることを憂慮する声明(RIEF)

2018-08-17 15:30:25

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  国連人権理事会(本部ジュネーブ)で有害物質や廃棄物の管理・処分と人権への影響を担当する3人の特別報告者が16日、東京電力福島第一原発事故後の除染作業などに、移民労働者や亡命申請者、ホームレスが含まれ、労働者全体が放射線被爆と、下請け企業などによる重大な搾取の危険にさらされているとの報告を行った。同時に、国連に対して、これら数万人に上る労働員の人権保護措置を、日本政府に緊急にとらせるように求めた。

 

 3人の報告者は、環境マネジメントと有害物質分野の専門家のBaskut Tuncak氏のほか、現代奴隷問題を調査するUrmila Bhoola氏、物理的・精神的健康問題を担当する Dainius Puras氏。彼らは9月に開く国連人権理事会の場で正式に報告する。

 

 この日の報告で特別報告者たちは、除染などのために雇われた労働員に、移民労働者やホームレスが含まれている点について「重大な関心を持っている」と説明。「彼らが放射性物質の被爆リスクを十分に知らされずにいる可能性と、経済的事情から有害な労働環境を受け入れざるを得ない状況に置かれている可能性がある。適切な訓練や防護措置が取られているかについても懸念している」と指摘した。

 

 さらに、「事故から7年以上が経過したものの、放射性物質被爆の影響について十分知らされていない労働員の物理的、精神的な健康への影響も懸念される」と述べている。

 

 福島の事故現場一帯で除染などに従事する労働者は、日本の厚生労働省によると、2016年で約4万6千人。放射線従事者中央登録センターの調べでは事故発生から16年までの5年間で約7万6千人が雇われたとしている。特別報告者は「いくつかの大手企業に雇用契約が与えられ、何百もの中小企業に下請けに出されている。こうした取り決めが労働者を集めるブローカーに使われ、労働者の権利を侵害する労働条件につながっている可能性がある」と憂慮した。

 

 さらに、「有害な放射性物質等による被爆のリスクは、貧困層や、子ども、女性、移民労働者、障がい者、高齢者などが受け易い。同時に、そうした人々はしばしば、人権侵害も受け易い。しかし、経済的事情から健康と引き換えに劣悪な環境での労働を受け入れさせられたりする。そうした状況や労働環境等については、多くの消費者や、そうした状況を改善する力を持っているはずの政策当局者たちには見えにくくなっている」と指摘、福島の労働現場で「搾取・差別」の構造が固定化しつつあることに懸念を表明した。

 

 国連の人権に関する特別報告者は、国連加盟国の個別の人権侵害状況について、個人からの訴えや非政府組織(NGO)の情報などを収集、現地調査も踏まえて国連人権理事会などに報告する。国連からは独立した人権専門家が担当し、報酬も受けない。

https://news.un.org/en/story/2018/08/1017232