HOME |広島・長崎への投下原発を製造し、現在は核廃棄物処理場になっている米「ハンフォード・サイト」で、白煙騒ぎ。作業員緊急避難。6時間後に解除。放射能漏れ等はない模様(RIEF) |

広島・長崎への投下原発を製造し、現在は核廃棄物処理場になっている米「ハンフォード・サイト」で、白煙騒ぎ。作業員緊急避難。6時間後に解除。放射能漏れ等はない模様(RIEF)

2018-10-28 17:41:57

hanford1キャプチャ

 

  米ワシントン州の「ハンフォード(Hanford)核廃棄物処理場」で26日早朝、突然、蒸気の煙が立ち上り、従業員の緊急避難要請の警報が発令された。警戒態勢は約6時間余りで解除され、放射性物質の漏洩等はなかったという。ハンフォードは第二次大戦中、原爆開発のマンハッタン計画の一角を占め、広島、長崎に投下された原爆の製造でも知られる。今も米国の「現役の廃棄物処理場」として、原子力政策の一端を担っている。

 

 処理場で煙が発生したのは午前6時。米エネルギー省(DOE)のリッチランド・オペレーションセンターが、敷地内の従業員に向けて「退避するよう」警告を発した。警戒態勢は放射性物質の漏洩がないことを確認したうえで、午後12時15分に解除された。

 

 原因はまだ明確ではないが、廃棄物を固形化する処理プロセスのトンネル付近から発生した模様。同プロセスでは熱と蒸気が発生するという。また、処理場全体は早朝の冷気で包まれていたことから、温度差で蒸気煙が発生した可能性も指摘されている。

ハートフォード廃棄物処理場
ハートフォード廃棄物処理場

 報道されている内容だと、処理場の外にも、敷地内でも放射性物質が漏れた可能性はないようだ。興味を引くのが同核廃棄物処理場は元々、1943年にマンハッタン計画の原爆を製造するために建設された核兵器製造工場だった点だ。冷戦期には9つの原子炉を配備、プルトニウム製造プロセスも5セット備えていたというから、文字通り米原子力戦略の「工場」だった。

 しかし、初期の各製造施設の放射線対策は十分ではなく、大量の放射性物質や廃棄物等が周辺のコロンビア川や大気中に放出された。その後、冷戦の終了とともに同工場は、核兵器製造を停止する。原子炉も1964年から1971年の間に閉鎖された。サイトに残ったのは20万㎥の高レベル放射性廃棄物のほか、71万㎥の固形放射性廃棄物、520㎢の地下水汚染地域だった。

 

 高濃度汚染のサイトは、通常の工場団地等への転用は不可能。そこで、放射性廃棄物の貯蔵・処理施設に切り替えられた。ただ、敷地内の高濃度廃棄物等は、現在の福島原発の汚染水処理と同様、保管タンクに貯蔵されたため、再三にわたって漏洩事故を引き起こしてきた。タンク自体が経年劣化し、内部の廃棄物が漏れ出したためだ。福島原発の敷地内に林立する汚染水タンク群も、同様の漏洩リスクを抱え続けていることで共通する。

 

  今回の白煙騒動も、そうしたハンフォードの歴史を踏まえて読み直すと、原子力問題の一つの事実が浮き上がってくる。軍事目的の原爆製造の場合も、発電用の原発の場合も、変わらず核廃棄物を生み出し続け、施設を立ち上げてから70年以上を経ても、立ち上る煙に怯え、異常な音に見構える日々が続いているということだ。人間は自ら生み出したものを、制御できないまま、立ち尽くしている、ということのようだ。

https://www.dailymail.co.uk/news/article-6322081/Workers-nuclear-waste-treatment-plant-mysterious-steam.html