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日本政府・三菱重工、トルコへの原発輸出断念の方向。福島事故後の安全費上昇で建設費倍増がネックに(各紙)

2018-12-04 21:53:35

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 各紙の報道によると、政府と三菱重工業などの官民連合は、トルコで計画していた原子力発電所の建設を断念する方向であることがわかった。建設費が東京電力福島第一原発事故後の安全対策費の高騰で当初想定の2倍近く膨らみ、トルコ側と条件面で折り合えなくなったという。日本での事故の教訓を無視した原発海外輸出の皮算用が行き詰まった形だ。

 

 (写真は、2013年に原発輸出で合意したトルコのエルドアン首相(当時)と、安倍首相)

 

 トルコでの原発新設は日本政府が掲げるインフラ輸出戦略の目玉の一つとされてきた。これで、日本の原発海外輸出計画は、政府と日立製作所が英国で建設をめざす計画のみとなるが、日立の計画も薄氷を踏む儒教に直面している。

 

 トルコでの原発新設計画は、2013年に安倍首相と当時首相だったエルドアン現大統領が会談して合意していた。建設場所は黒海沿岸のシノプで、三菱重工を中心とする企業連合の手で、4基を建設する予定だった。当初は2017年に着工して、2023年には1号機の稼働を目指していた。

 

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 三菱重工が7月末にトルコ政府に提出した事業化に向けた調査報告書では、建設費は当初想定(220億㌦)の2倍近くに増大し、総事業費は5兆円規模に達したとみられる。特に2011年の東電福島原発事故後に、原発の追加安全対策が強化され、建設費が大幅に上昇した。

 

 今年8月には、トルコ政府と米国の対立が表面化し、通貨リラが暴落。その結果、建設コストはさらに膨らんだ。三菱重工は総事業費の見直しを進めたが、建設後の売電価格や資金計画などでトルコ政府と折り合えなかったとみられる。三菱重工首脳はこれまで「経済合理性の範囲で判断する」と主張していた。

 

 一方、政府はトルコに対して、エネルギー事業の支援を継続し新たな協力の枠組みを立ち上げることも検討するという。具体策は今後詰めるが、CO2排出量を抑える最先端の超々臨界圧石炭火力発電所(USC)の新設などを提案するとみられる。しかし同石炭火力については天然ガスなどよりもCO2排出量が多く、欧州の投資家や環境NGOなどからは「温暖化対策に逆行する」との批判が出ており、日本の支援の「質」が問われる形だ。

 

 国内では経産省と電力会社のタッグで拡大してきたのに対して、原発の海外輸出は原発メーカーと経済産業省など国がタッグを組んで推進してきた。日本に残された海外案件は、英国のアグルシー島で建設を計画している日立製作所の案件のみとなる。

 

 日立は6月に英政府と事業推進に向けた覚書を締結したが、最終決定はまだしていない。2019年末までに決定する見通しとされる。現在、水面下での調整を続けている。

 

 これまで政府と国内原発メーカーはベトナムやリトアニア、台湾への輸出を計画してきた。だが、いずれも相手側が中断を決定。東芝も原発子会社だった米ウェスチングハウス・エレクトリックが経営破綻し、英国など海外での建設事業から撤退した。

 

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