米国が60年前に核実験を繰り返したビキニ環礁等の放射能汚染、依然、高濃度で残留。一部はチェルノブイリや福島の1000倍以上。温暖化による海面上昇で汚染土壌流出のリスクも(RIEF)
2019-07-21 23:34:18
米国が60年以上も前に、南太平洋で原爆・水爆実験を繰り返したビキニ環礁等の島々で今も、高い濃度の放射性物質が残留していることがわかった。一部では、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故や東京電力福島第一原発事故の放射能汚染地より、1000倍以上も高い濃度も検出されている。「人類は放射能を制御も、浄化もできない」ことを、静かな南太平洋の島々が伝えている。
(写真は、どこまでも青い海と空。だが、環礁に残留した放射性物質は核実験後60年を経てもあまり減っていない)
調査は米コロンビア大学の
その結果、ビキニ環礁では外部ガンマ線が最高値648ミリレム(6.48ミリシーベルト)を記録、平均値も191ミリレム(1.91ミリシーベルト:2018年数値)、中央値で149ミリレム(1.49ミリシーベルト:同)と全体的に高い濃度を検出した。
エニウェトク環礁のEnjebi島からは最高272ミリウム(2.72ミリシーベルト)、平均69ミリウム(0.69ミリシーベルト)、ロンゲラップ環礁からは最高543ミリウム(5.43ミリシーベルト)、平均322ミリウム(3.22ミリシーベルト)、ウチリック環礁は最高12ミリウム(0.12ミリシーベルト)、平均7.9ミリウム(0.079ミリシーベルト)だった。
エニウェトク環礁の一部であるルニット(Runit)島には、核実験で発生したクレーター内に、大量のがれきや汚染土壌等を投棄したコンクリート製の円形ドームの廃棄物施設がある。1970年代に建設された同施設の底面は何らの加工もされておらず、そこから汚染物質が海洋流出する危険性も指摘されている。http://rief-jp.org/ct13/89933?ctid=76
米国とマーシャル諸島共和国がロンゲラップ環礁の住民の再定住のために結んだ覚書では、住民のガンマ線の生涯被ばく量を100ミリウム(1ミリシーベルト)としている。今回の調査で、同環礁の現在の平均濃度は、この基準を依然、3倍以上も上回っていることがわかった。
調査で検出された放射性物質は、アメリシウム241、セシウム137、プルトニウム238、同239、同240など多岐にわたった。このうち、セシウム137 は、日本では農地の土壌基準としてIkg当たり5000ベクレルとしている。被爆から60年後のマーシャル諸島でのデータの多くは日本の基準以下だったが、一部は上回る地点もあったという。
研究チームは、特にビキニ島に残留する放射性物質のプルトニウム等の一部では、1986年のチェルノブイリ原発事故での立ち入り禁止地域や、東電福島第一原発事故の汚染地域に比べて、約10~1000倍の濃度が依然、残留している点を重視。放射性物質の減少・希釈は十分に進んでいないとの見方をしている。
さらに島によっては、温暖化の加速による海面上昇で汚染物質を含む沿岸部の土壌が海洋に流出し、別の環礁や海洋全体を新たに汚染するリスクも生じているという。各島のうち、ウチリック環礁は相対的に濃度の低下が確認されたが、それでもプルトニウム等の濃度はチェルノブイリや福島より高い。
https://www.pnas.org/content/early/2019/07/09/1903421116