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東電事故時の、米原子力規制委員長のヤッコ氏、「原発技術は破綻。事故は必ず起こる」とインタビューで警鐘(各紙)

2019-08-02 00:46:45

yakko1キャプチャ

 

   2011年の東京電力福島第一原発事故当時に米原子力規制委員会(NRC)委員長だったグレゴリー・ヤツコ氏(48)が、東京新聞のインタビューに答えた。同氏は、経済性や安全性を理由に「原発は破綻した科学技術だ」と主張。「原発に頼る限り事故は必ず起きる」と述べた。また、原発政策に固執せず、発電コストが下がり続けている風力や太陽光などの再生可能エネルギーの開発に全力を注ぐべきだと求めた。

 

 米国は世界随一の原発大国で、現在も98基の原発が稼動している。NRCはそうした原発の安全規制や許認可を担う連邦政府の独立機関だ。ヤツコ氏はNRCを2005~12年の間に委員、委員長を務めた。特に福島事故時は委員長として事態収拾に向けて日本側と再三にわたって協議を重ねた。自ら来日して、福島の現場にも足を運んだ。また福島での教訓を踏まえて、米国の原発の安全対策の強化にも尽力した。

 

 同氏はインタビューの中で、福島の事故後、NRCとして地震や火災、水害などの災害に対する原発の弱点を洗い出し作業を実施したが、米国原子力業界の妨害などで、「ごくわずかな改善」しか実現できなかったと打ち明けた。

 

NRC委員長の時のヤッコ氏
NRC委員長の時のヤッコ氏

 

 「原子力業界」という「圧倒的な存在」が米国でも、規制当局や政官界にまで幅を利かせて、本来、原発の安全性を確保するために必要な安全対策の立案を阻み、一方で経済性が落ち込んだ原発を延命させる一因になっていると指摘した。

 

 さらに同氏は、日本政府が福島事故後も原発の再稼動にこだわり続けている点について、「次の事故のリスクを認識、理解する必要がある。(事故がまた)起きるかどうかではなく、いつ起きるかだ」と警鐘を鳴らした。

 

NRC委員長就任時の宣誓式
NRC委員長就任時の宣誓式

 

  原発擁護論者は、原発が稼働時にCO2を排出しないことで、気候変動対策に資すると主張する。しかしヤッコ氏は「気候変動の面でも原発は有害」と指摘。「原発頼みで再エネ技術に投資しないと、事故やトラブルで原発を動かせない場合に、手っ取り早く火力発電で代替するしかなく、CO2排出量が増える。まさに日本で起きたことだ」とした。

 

 米国では一部の州政府が、原発に補助金を出して、早期退役を防ぐ取り組みも目立つ。同氏は「これは気候変動対策を装った原子力産業のための延命策」と断じた。

 

 また福島事故後の米国内での原発増設をめぐって、「まるでフクシマがなかったかのように認可を出すのは支持できない」と反対に回り、一貫して安全対策の強化を主張した。しかし、他の4委員との対立が表面化し、任期途中での退任となった。

 

NRC委員長退任時のヤッコ氏
NRC委員長退任時のヤッコ氏

 

 同氏は「NRCの仕事は、業界への影響に関係なく、安全上の決断を下すこと。しかし、業界は連邦議員らを使ったり、職員に近づいたりして、NRCの決断に介入しようとする。少なくとも委員の大半は業界への影響を気にしていた」と明かした。日本の原子力委員会はどうなのか。

 

 「原子力ムラは日本だけの問題ではない。規制当局や議会、業界が密接にかかわりあうなど、米国にも多くの共通点がある」と指摘した。

 

  Gregory B. Jaczko・グレゴリー・ヤッコ 1970年ペンシルバニア州生まれ。ウィスコンシン大学マディソン校卒、物理学博士。民主党上院議員の政策補佐官(科学担当)などを経て、2005年にNRC委員。オバマ前大統領の指名で09年にNRC委員長に就任。12年に退任。現在は、ジョージワシントン大学やプリンストン大学で教壇に立つほか、洋上風力発電事業等に携わっているという。

 

https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201907/CK2019073102000154.html