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東京電力福島第一原発、積み上がる汚染処理水のタンク。2022年夏には敷地内満杯で限界に。東電が初の試算。海洋放出を求める形に(各紙)

2019-08-09 16:50:29

fukusimatankキャプチャ

 

 各紙の報道によると、東京電力ホールディングスは、福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含む処理水を保管するタンクが2022年夏ごろに満杯になるとの試算をまとめた。これ以上、タンクを大型にするなどして保管容量を増やすのは困難という。9日に開いた政府小委員会で説明した。東電や経産省などは処理水を薄めて海洋放出を検討しているが、地元の漁業関係者等が風評被害を恐れて反発している。今回の試算公表は政府に海洋放出決断を促す「圧力」との見方もできる。

 

 福島第一原発は2011年の原子炉内の核燃料が溶け落ちるメルトダウン(炉心溶融)事故の影響で、壊れた原子炉内に流入した放射能汚染水が絶えず発生している。これらの汚染水は放射性物質を取り除く専用装置で処理しているが、トリチウムはそうした処理設備では取り除けず、敷地内の専用タンクで保管されている。

 

 現在までにタンクは960基が設置され、約115万㌧の処理水が保管されている。東電の計画では2020年末までに137万㌧をタンクで確保できるとしている、汚染水は一日平均で約170万㌧(2018年度実績)が発生、東電は2020 年中に発生量を150万㌧にまで減らす作業を進めている。しかし、試算によると、汚染水を減少できても、敷地は限られているため、2022年夏~秋には、保管するタンクが満杯になるという。

 

 処理水の処分方法を議論している小委は、9日に約7カ月ぶりで開催した。これまでは地層注入や蒸発など5種類の処分方法を検討しており、今後、長期保管も選択肢に加わる。ただ、経産省や東電は、海洋放出をもっとも現実的な手段と考えているとされる。トリチウムは放射性物質だが放射線は弱く、国内外の原発ではトリチウムを含む冷却水等を海洋放出しているためだ。

 

 ただ、福島原発の場合、事故原発であり、海洋放出量が大量になることも無視できない。さらに、これまで海洋には膨大な浄化機能があるとされてきたが、別途、国際的な問題となっている海洋プラスチック汚染問題のように、海洋の浄化能力を超える人間の汚染の累積も明らかになっており、「海だからいい」との論法は容易には通用しない。

 

 今年4月には、世界貿易機関(WTO)が、福島県などの水産物の輸入禁止を続ける韓国の措置を容認している。トリチウム含有処理水の海洋放出を打ち出すと、日韓関係だけでなく、他の国にも日本製品全体に対する疑念を再来させるリスクがないとも言い切れない。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201908/CK2019080902000158.html

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190809&ng=DGKKZO48376090Y9A800C1EA1000