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原子力研究開発機構の材料試験原子炉(JMTR)の冷却塔も、台風15号で倒壊。廃炉準備中で放射性漏れはなし。原発の気候変動対策強化の課題を、浮き彫りに(RIEF)

2019-09-10 15:21:08

JMTR1キャプチャ

 

 日本原子力研究開発機構(JAEA)は、台風15号の強風で、茨城県大洗町にある材料試験炉JMTR(発電容量5万kW)の高さ16.5mの冷却塔が倒壊した、と発表した。冷却塔の崩壊で隣接する建物の壁面も損壊した。同試験炉は廃炉に向けて準備中で、2006年に運転を止めてから稼働していない。核燃料は約100m離れたプールに保管しており、外部に放射性物質は漏れていない、と説明している。

 

 (写真㊤は、台風で完全に崩壊したJMTRの冷却塔。㊦は崩壊する前の姿)

 

 機構によると、9日午前7時40分ごろ、協力会社の社員が見回りをした際に、冷却塔の倒壊に気付いた。午前6時時点の確認では異常はなかったという。倒壊した冷却塔は木造で高さ16.5m、幅約30m、奥行き11.6m。原子炉を冷やすために使った水の熱を大気中に放出するために設置されていた。

 

台風で崩壊する前の冷却塔設備
台風で崩壊する前の冷却塔設備

 

 冷却塔には放射性物質を含まない水を流す金属製の配管などがあるが、倒壊の衝撃でそれらの配管から30~40㍑程度の水漏れがあった。さらに倒壊によって設備の一部が隣接する換気施設に倒れ、壁面2ヶ所を損傷したという。

 

 台風襲来によって、JMTR周辺の高さ10mの場所で、午前7時時点で毎秒30.9mの最大風速を観測した。

 

 JMTRは発電用原子炉などで使用する燃料や材料を中性子で照射し、それらの耐久性や適正を実際に試験する、いわば「原子炉をつくるための原子炉」として建設され、1968年に初臨界した。2006年まで運転を継続した。その後、老朽化のため改修工事を進めていたが、新規制基準を満たすのに必要な費用がかさむことから、再稼働を断念していた。

 

 原発には非常時の停電の際等には、自家発電装置等が整備されている。だが、今回の台風のような強風による設備の破損対応はあまり想定していない。JRTMは廃炉準備中だったが、再稼動した原発等の自然災害対応の強化の課題を浮き彫りにした形だ。

https://www.jaea.go.jp/02/press2019/p19090901/