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ドイツの2022年の原発廃棄計画、高レベル放射性物質の最終処分場問題が課題に。100万年後の人々に「危険」を伝えるコミュニケーション手法の開発も(各紙)

2019-12-03 13:55:05

CNNgermany4キャプチャ

 

 CNNの報道によると、2022年までに脱原発方針を打ち出しているドイツで、高レベル放射性廃棄物の最終処分場探しが難航している。22年までに全基を廃止し、31年までに処分場を見つけるスケジュールだ。だが、約2万8000㎥の高レベル放射性廃棄物を今後100万年にわたって安全に長期間、埋蔵できる候補地を見つけることは至難の技。政府が原発再稼動を推進する日本も、いまだに見つかっていない。

 

 (写真は、爆薬を使わず、ロボットを使って原発の冷却塔を解体するドイツでの作業)

 

 ドイツは2011年3月に起きた東京電力福島第一原子力発電所事故を目の当たりにして、メルケル政権が脱原発の方針を決めた。現在稼働している7基の原発も、2022年までに全部閉鎖する。専門家チームは来年中に、ドイツ国内で最終処分場の候補地を選定したい考え(廃棄物を国外に輸出する計画はない)としている。

 

 原発閉鎖に伴って、期限の31年までに、放射性廃棄物を最終的に埋蔵保管する場所を見つけねばならない。国内すべての原発から廃棄される高濃度放射性物質はすべて最終処分場に入れ、2130年~2170年の間に封印する計画だ。

 

ドイツ国内に点在する放射性廃棄物の一時保管場所
ドイツ国内に点在する放射性廃棄物の一時保管場所

 

 現在、高レベル放射性廃棄物は、各原発近くの一時保管施設に保管されている。しかし政府委員会の専門家によれば、そうした施設は数十年程度の保管にしか耐えられない設計だという。一時保管場所は、ドイツ全土に点在している。最終処分場は、これらの廃棄物を地下1km以上の深さに埋蔵することになる。

 

 専門家によると、高レベル放射性廃棄物は約2000個のコンテナに入れて埋蔵する。埋蔵場所は地盤が安定した場所でなければならず、放射性物質の流出を引き起こすような地震発生地や地下水に触れる場所は対象外だ。日本の場合、どこでも地震が発生し易く、地下水も豊富なため、ドイツ以上に、最終処分場の適地は限られている。

 

 埋蔵地が見つかった場合でも、そこまでの廃棄物の輸送手段や、廃棄物を覆い固めるために使う物質の選定、未来の世代にその存在を伝える手段の確立などの課題も、今後、解決しなければならない。

 

高レベル放射性廃棄物の処分スケジュール
高レベル放射性廃棄物の処分スケジュール

 

 コミュニケーションの専門家によると、数千年後には、人々は今とは全く違う言葉を話していることも予想される。そのため、それらの未来の世代に、「埋蔵地を破壊してはいけない」と伝える手段の確立にも取り組んでいるという。埋蔵地の意味が伝わらないと、探検家がエジプトのピラミッドに立ち入るような状況になる可能性もあるためだ。専門家は、「『好奇心は良くない』と伝えなければならない」と指摘している。日本ではこうした視点はあるのだろうか。

 

 こうした課題の前に、最大の課題は、埋蔵候補地の住民・自治体で高レベル放射性廃棄物の受け入れに前向きなところが見当たらないという点だ。この点は日本と共通する。高レベル放射性廃棄物の中には、使用済み核燃料棒などのような、最も致死性の高い物質が含まれる。「もしも容器を開封すれば、ほぼ即死する」と専門家はいう。

 

最終処分場計画に反対して座り込む住民たち
最終処分場計画に反対して座り込むニーダーザクセン州ゴアレーベンの住民たち(2011年)

 

 しかも、燃料棒は恐ろしく高温なため安全に輸送することは極めて困難で、現在は容器の中に保管して数十年がかりで冷却を行う段階にある。この分野で先端を行くフィンランドは、花崗岩(かこうがん)の岩盤深くに高レベル廃棄物を埋蔵する計画を進めている。しかしドイツの場合、それほど多くの花崗岩は存在せず、岩塩や粘板岩、結晶質岩への埋蔵を検討しなければならない。

 

 最終処分場建設をめぐって、住民との間でトラブルになったことは再三ある。岩塩鉱山だったドイツ東部のアッセ(Asse)とモルスレーベン(Morsleben)では、1960年代~70年代にかけて低レベルおよび中レベルの放射性廃棄物処分場として使われていたが、その後、強化された現在の安全基準を満たすことができなくなり、多額の資金を投じて閉鎖せざるを得なかった。

 

 高レベル廃棄物の処理の場合、住民の不安はさらに大きい。ドイツ西部ニーダーザクセン州ゴアレーベン(Gorleben)では最終処分場の候補地に擬せられたことから、地域の住民が40年以上もの間、最終処分場建設計画に反対する運動を続けてきた。政府はこうした根強い反対の声を受け、処分場の候補地探しを最初からやり直す方針を決めた。それでも同地の住民の警戒心はまだ解けない。

 

 世界には400以上の原発が稼動しているが、その多くが稼動期限を迎えつつある。最終処分場の問題は一層差し迫った課題になっている。日本でもドイツ以上に、この問題は大きな、困難な、課題であることは間違いない。日本政府は住民、国民に、明確な方針を伝えてきたのだろうか。

https://www.cnn.co.jp/world/35146228.html

https://edition.cnn.com/2019/11/30/europe/germany-nuclear-waste-grm-intl/index.html